隣の部屋のシゲオカくん (ページ6)

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「…なぁ、小瀧ってば」

アパート前の通りに出てすぐに、背後から聞こえる声。

「ん？」

「ん？ちゃうわ。これ、」

足は止めずに目線だけうしろにやると、何か言いたげな顔で俺に取られた腕をぶんぶんと振るしげ。

若干紅い顔してんのが、また堪らんな。

ああ、走ってへんよ？早歩き。

まぁ俺そんなに体力無いし、何ならしげのが余っ程あるんやけど。

じゃあ何でしげはそんなに顔紅いんかって、

「これはちゃうやろ！これは！」

ちゃっかり恋人繋ぎにして、抜かりないやろ？俺。

「案外そういうの気にするんや」

「案外って何やねん」

「これやなかったらええん？」

「…とりあえず離せや、」

「何で？ええやん別に」

「は、お前…少しは人の目ってのを気にせんかい！」

「誰も居らんやん、人」

「そういう問題ちゃう！」

ああ言えばこう言うで返していると、はぁ、という溜息と同時に、さっきまで暴れていたしげの手から力が抜けた。

「本間にお前は…俺のこと揶揄っとんの？」

「…揶揄ってへんわ」

背後から聞こえる少し呆れた彼の声に、振り返らず前を向いたまま答えた。

「別に、しげとなら俺そういうの気にしないけど」

一瞬ぎゅっと力が入った彼の手と、あほちゃう、という小さな呟きは、きっと俺にしか分からない。