16:三人の関係。 ページ16
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窓を開けておけ、そういった指示が届いた為、鷗外は部屋の窓を開ける。
此処から出入りをする非常識な人間は、今も昔もあの人物だけだ。
「あら、もう一ヶ月が経ったのね」
「時が経つのは、早いものだねえ」
彼女は月に一度、元医師である鷗外の定期検査を受けにくる。
ある理由から普通の医者に行くことはできないのだ。
りーん、と聞こえる音が、彼女が近づいていることを伝える。
『よっと、、どうも森さん』
「やあA。福沢殿の許可は得てきたのかな?」
易々とマフィア本部に侵入した女、横光Aは軽い挨拶をする。
月に一度のこの機会だけ、福沢、鷗外、Aの三人の敵対関係は無くなる。
それは、彼ら三人が昔からの知り合いであるからだ。
勿論、エリスを含めたこの四人以外にこの密会を知っている人物などいない。
『エリスちゃん、森さんと仲良くやってます?』
「その話し方、気持ち悪いわ」
『うわぁ、辛辣ですね』
検査、と云っても、彼女の異能は自己治癒能力である為、必要はないと思われる。
ただ、それが本当であるならば、だ。
定期検査を受けにくる、これは自分の元を離れるAに鷗外が云った条件。
彼は彼なりに、彼女が心配なのだ。
「はい、今回も健康的で結構だね」
『まぁ、勝手に治癒してくれる能力持ってますし』
有難うございました、と身支度を整える彼女は、鷗外には昔とは全く別人のように見えた。
"姿は殆ど変わっていない"のに。
『それにしても、バレたら大変ですよ?』
「君が此処に来ていることがかい?」
『そうです。私は探偵社員ですし、別に元マフィアって訳でもないですし』
「だが、私と君の仲じゃないか」
ニコニコと笑う鷗外に、Aは軽く溜息をついた。
彼女とて、最初は鷗外がつけた条件を必死に拒否したのだ。
『それにあの命令』
「君に手を出すなってやつかな?」
『余計なお世話ですよ。どうせ私、殺しても死なないのに』
面倒臭そうに話すAに、鷗外が笑みを絶やすことは無かった。
じゃあまた一ヶ月後、と云って窓から出て行く後ろ姿は、唯一昔から変わっていなかった。
「ずっとこのままだったら善いのにね」
「そう上手くはいかないわ」
鷗外の寂しそうな声が、部屋に小さく響いていた。
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ろろみや。(プロフ) - のりばやしさん» 本当ですか?!是非ともよろしくお願いします! (2017年12月19日 7時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
のりばやし(プロフ) - 主人公さんをかかせていたたけないでしょうか? これからも更新がんばってください!! (2017年12月18日 22時) (レス) id: 450ab9bd17 (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - 龍愛さん» ありがとうございます!そう言って頂けると嬉しいです!更新、頑張ります! (2017年10月19日 0時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
龍愛(プロフ) - ろろみや。様の作品を初めて拝見させていただきました!とっても面白いです!!私の好みの作品です!更新、頑張ってください! (2017年10月18日 22時) (レス) id: a85de7e0fb (このIDを非表示/違反報告)
ろろみや。(プロフ) - ぽっぽさん» ありがとうございます!!更新頑張ります!! (2017年10月16日 23時) (レス) id: fe8b589f10 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ろろみや。 | 作成日時:2017年10月9日 1時