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目的の場所についた頃、日はすっかり落ちていた。
建物のないそこは、光一つ無くて、静寂に包まれていた。


『ところで、何故星が見たくなった?』

「いやぁ、あんまりちゃんとした理由はないんだけど」


たどり着いたその場所は、邪魔するものがなく、空を見るには最適な場所だった。
社員寮からそう離れていないこの場所に、こんな所があるなど誰も知らなかっただろう。


「ずっと星を見る余裕なんてなかったら、ふと見てみたくなって」

『……ふうん、君らしい答えかな』

「出会ったばかりなのにそんなことがわかるの?」

『あはは、確かに』


二人しかいない空間で、会話が妙にしっくり噛み合った。
互いのことなど、何も知らないはずなのに。

久しぶりに見た星は、想像以上に綺麗に見えて、敦はそれに見惚れた。
今度時間があったら誰かと来よう、とこっそり思ったりもした。


「ところでAはどうしてここを知っていたの?」

『昔、知り合いが連れてきてくれてね』

「その人は星が好きなんだね」

『そのくせに星座な何も知らないんだぜ? おかしな奴だよ』


Aは指をさして、話題に上がった星座について話した。
彼女は独学だと言うけれど、その知識はそれなりのものだった。

正しいかそうでないかは、確かめる術がないからわからないけれど。


「詳しいんだね」

『さっき言った知り合いが知らなすぎて調べただけだよ』


ただ空を見上げているだけなのに、時間はあっという間に過ぎていった。

帰らなければ心配されてしまうかもしれない。
そう思って二人は帰路につく。


『少年は、待っててくれる人がいる?』

「えと、同居人が」

『同居人? ほほう、そういうね』

「何だか知らないけど、君が思っているようなものじゃないような」


何と繋がる質問だったのかはわからなかった。
だけれど、それはいいことだとAが笑うから、敦も笑って返した。

やむを得ない同棲ではあったけれど、それなりに楽しくやっている。
逆に、一人では寂しくなってしまうかもしれない。
そんなことは恥ずかしくて言わないけれど。


『それでは少年。また明日!』

「うん、また明日」

『あ、三つ目の願い、考えといてね』


思い出したように告げて、彼女は去っていく。
どこに向かうかもわからず、ふらふらと。

その後ろ姿に若干の違和感を覚えつつも、敦も寮へと向かった。
三つ目はどうしようかな、と考えながら。

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砂木雲雀 - 感動しました…!久しぶりにとってもいいお話を読めた気がします。ありがとうございましたぁあ…!!! (2019年6月23日 14時) (レス) id: f363e24a01 (このIDを非表示/違反報告)
真綺 - めっちゃ感動しました!! ありがとうございました!! (2019年6月23日 13時) (レス) id: 06efcbf80c (このIDを非表示/違反報告)
柊まふ(プロフ) - とても 泣きました……!神作品を、ありがとうございます (2019年6月23日 12時) (レス) id: 9a5360aa7e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ろろみや。 | 作成日時:2019年6月23日 2時

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