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「A、二つ程聞きたいことがあるのだけど」
『同行して下さる代わりに何でもどうぞ』
自分の異能を頼りに目的地に向かう道中、Aの隣を歩く太宰が言葉を発した。
彼にしてはわかりきった質問だったのかもしれない。
だからきっと、確認のようなものだったのだろう。
Aは問われることを拒まなかった。
別に、こうなることを知っていたわけではない。
ただ、予感があったから。
答えない理由もなかったからだ。
「未来のツシマはどうなったのだい？」
『殺しました、私が。こちらに来る直前に』
「そうか」
あまりにもサラリと答えられた事実。
彼女はもう、慣れている。
慣れていいはずもない痛みを、繰り返した。
大凡、そんな気はしていた。
だって彼こそが事の発端であり、元凶。
ここまでして過去を変えたいAが許すはずなどないのだから。
『もう一つは何ですか？』
「この計画は何年越しに実行されている？」
『子供でしたから、漠然と計画していた頃もありましたが、大体九年です』
二つ目の質問の答えに、太宰が少し眉をひそめたような気がした。
九年、それはどうしようもなく、長い。
成長の早い子供からしたら、尚更。
「……では一つ、言っておくよ。
普通人間はそう長い時間に耐えられる忍耐を持たない。ましてや九年なんて、常人からすれば正気の沙汰ではない。
たとえそれが、恩人の命を救うためでも」
『何が言いたいんですか？』
「君と同じ、逸脱した忍耐の持ち主を、私たちは一人だけ知っているということだ」
Aが黙り込んだ。
意地が悪いな、と思う。
それには触れないのが、普通の優しさだと思っていたから。
かと言って、太宰がその普通に当てはまるとは思っていなかったけれど。
『……言いたいことはわかりました。ですが私も、そんなことは理解しています』
「それならわかっていて、二度殺したのだね」
同一人物を二度殺すなど、ありえない話だ。
だが実際に、それが起きた。
一度目は単純に、恨みで。
そして二度目は、守るため。
否、守るためだなんて、そんな綺麗な理由ではない。
自分のため、と言うのが一番的を得ているだろう。
だってそうしない方法だってあったのだから。
『ええ。おそらく私の名前はツシマ。
そして二度、実の父を殺したのでしょう』
似ているだなんて、言われたくない。
本当はそんな事実を、認めたくはないのだ。
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砂木雲雀 - 感動しました…！久しぶりにとってもいいお話を読めた気がします。ありがとうございましたぁあ…！！！ (2019年6月23日 14時) (
レス) id: f363e24a01 (このIDを非表示/違反報告)
真綺 - めっちゃ感動しました!! ありがとうございました!! (2019年6月23日 13時) (レス) id: 06efcbf80c (このIDを非表示/違反報告)
柊まふ(プロフ) - とても 泣きました……！神作品を、ありがとうございます (2019年6月23日 12時) (レス) id: 9a5360aa7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ろろみや。
| 作成日時：2019年6月23日 2時
