56:愛する長ネギとピーマン ページ9
朗読会お疲れ様、ということで皆で飲みに行ったのが昨日。
相変わらず私を振り回して何が楽しいのやら。皆からはおふたりって仲が良いですね!と言われ、どう反応すればいいのか悩んでいたら、仲良しなんです〜と笑顔で彼が肯定した。
__雄馬さんのラジオで、私に嫌われるとかどうとか言ってたのにどういうこと?とは聞けず。やはりあの人のことはよくわからない。
「うわ、俺の長ネギがない」
「美味しくいただきました」
「ちょっと」
「冗談です。下の方に入れてます」
今日は午後がオフということで私は彼の家に遊びに来ている。
彼は冷蔵庫からネギを見つけ、“俺の愛しの長ネギ…!”と独り言のように言っていたのでスルーをした。しかし静まり返った雰囲気がいけなかったのか“何か反応してよ”と言われた。
…本当にあの人のことはよくわからない(2回目)。
「淳弥さんってよく野菜食べますよね」
「Aよりもね」
ザク、と長ネギを切り始める淳弥さん。
何作るんですか?と聞くと、長ネギの肉巻きという答えが返ってきて嬉しくなる。
「女子力高くて羨ましいです」
「俺の美味しい料理、どう?」
「あなたの料理のせいで体重が増えたのは事実です」
「あらぁ」
「その表情イラッとします」
私はよく彼の料理をしている姿を近くでじっと見る。というより習慣となっていた。
「相変わらず野菜嫌いすごいな。ちゃんと野菜食べよ、ね?」
「…嫌」
子供だなぁと笑われた。なかなかのわがままな子供だなという自覚はある。
「何が食べれるんだっけ」
「キャベツとレタスですかね。あとネギ。他は…うん、ピーマンとかにんじんは無理ですね」
「へぇ〜」
「…嫌な予感しかない」
にやにや。あ、これは(私にとって)悪い方向にしかいかないような気がする。
「俺が野菜を使ったの作るよ。ピーマンなら肉詰めとかどう?」
「…」
流石に最初からピーマンは難易度が高い。
「返事がないので明日はそれでけってーい」
「えっ」
待って、待ってください!と彼の腕にしがみついて必死に止めても彼は聞く耳を持たなかった。
378人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:のん | 作成日時:2023年3月11日 19時