検索窓
今日:72 hit、昨日:7 hit、合計:63,045 hit

85:面倒くさい人 約1名 ページ40

「聞いてない」

「すみません」

「聞いてない」

「…すみません」


なぜ私は謝っているのだろうか。いや、言っていなかったから私が悪かったのか。

では何が?というと、九州にある大学でトークイベントがあるのだ。1泊2日で行く。“あのこと”があってどうなるかと不安だったが、予定通り開催されるようでホッとする。このことを淳弥さんには言っていなかった。

…そもそも言う必要はあるのか。


「言う必要ある」

「うわ。人の心を読まないでください」

「だって2日間離れ離れとか正気かよ」


と、ソファに座っている私の肩に手を置く。彼は一生懸命なようで。…大丈夫かな。


「あなたの方こそ正気ですか。仕事ですよ仕事。せっかく大学のトークショーに出れるんですから」

「俺とトークショー、どっちが大事?」


こういうこと言う人いるんだなとなぜか冷静になる。仕事と私、どっちが大事なの!?っていうやつかな。


「トークショーです」

「っこの」

「わっ」


仕事を選ぶとすぐ私の髪をくしゃっと撫でる。両手でぐりぐりとされて髪はボサボサ。
こうして冗談を言えるのは彼だから、というのを本人がわかっているからこそできることなのだろう。

__しかし、本気でショックを受けていたのはここだけの話だ。


「淳弥さん、拗ねないでください」

「…拗ねてねぇ」

「すぐ帰ってきますから」

「ん」







時は流れ、私は既に九州に到着している。今はホテルで1人で休んでいる。イベントは明日だ。今日は早く寝て明日に備えようと思う。

__でもその前に。


「…もしもし」

『ホテルに着いた?』

「うん」

『寂しくなった?』

「っ、うん」

『そっか』


淳弥さんに電話をかけた。大好きな声を聞くことができて、下唇を噛む。うるっときてしまった。声が少し掠れているのは気のせいだと思いたい。


『もう寝るの?』

「はい。だから寝る前にと思って」

『俺もあとは寝るだけー』

「珍しいですね。まだ日付変わってないのに」

『俺のことなんだと思ってるの』

「夜更かしする人」

『うん。否定はしない』




86:ホラーゲームのゲームオーバー前→←84:何かがある、ゼッタイ



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (160 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
378人がお気に入り
設定タグ:榎木淳弥 , 男性声優 , 声優   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:のん | 作成日時:2023年3月11日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。