ミえるヒト。【地縛少年花子くん】 (ページ28)

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二十八ページ28

家にはどうせ弟がいるだろうと思い、ドアノブを回した。

　
「？」

　
しかし、ドアには鍵がかかっていた。つまり、誰も帰っていないということ。

　
別に今日は特別なことはなかった気がする。

　
弟も帰っている時刻なのに、と考えが浮かぶ。

　
私は鞄から家の鍵を取り出して鍵を開ける。

　
家の中はひんやりとして、そして静かだ。

　
「…？」

　
いつもはすぐさま2階へ行って自分の部屋の入るのだが、今日はリビングに行った。

　
何か書き残しがあるかもしれないと思って。連絡手段はあるけど。

　
「……え。」

　
ヒントは書かれていた。いや、答えと言ってもいいかもしれない。

　
キッチンの前にあるテーブル。そこには1枚の紙が置かれていた。その紙には殴り書きで、

　

　
_________弟が運ばれた病院に行ってくる。

　
そう書かれていた。

　
＊

　
その後は無我夢中だった。

　
近くに大きな病院がある。多分そこだろう。

　
走りながら、親に電話をかける。

　
「お母さん、今どこ！？」

「…203号室。」

「！」

　
短く、病室の場所を言って向こうから電話を切る。

　
母の声は小さく、そして細く。気力がないような感じだった。

　
＊

　

「はぁ…はぁ…。」

　
息を整えながら、203号室の前に立つ。落ち着いてから、中に入らないと。

　
しかしこの時。私は中に入ることができなかった。

　
「どうして…どうして、Aじゃなかったのよ…。」

「…っ！？」

「優秀な子が、交通事故に遭うなんて…！許せない…。」

「…。」

　
は？何それ。そんな風に思ってたんだ、お母さん。

　
つまりそれは、私が事故に遭っとけ、ということなのだろう。

　
そんなこと、病院では言わないでほしいな。たとえ、誰も聞いてなかったとしても。いや、私が聞いてるか。

　
「お願い。目を覚まして…！」

　
外からでも聞こえる。母の泣きながら願いを言っている。

母は知っているのだろうか。

　
さっき、詳細を病院の方から聞いた。

　
__________赤信号を無視して、歩きスマホをして事故に遭ったらしいですよ。

　
と。