ミえるヒト。【地縛少年花子くん】 (ページ11)

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十一ページ11

「ただいま。」

　
家に帰れば、人はいるのにシーンと静まり返っている。

　
父と母は、外では良い親を演じている。

だから、初日の車の中。あれは一応外と捉えているから良い親を演じていただけ。

　
「ただいま、お母さん。」

　
リビングにいる母に声をかける。しかし、

　
「…。」

　
おかえり、という言葉は返ってこない。

　
_______その後。弟が帰ってくるが、笑顔で母はおかえりと言った。

　
＊

　
実は夕食も別々である。

　
3人が先に食べ、時間を見計らって1階に行き1人で。

　
中学3年の時の事件を、家族は根に思っている。

そして、私のことを気持ち悪がっている。

　

　
弟は普通だ。

普通に愛され、普通に幸せな生活を送っている。

　
「私だって…。見たくて見てるわけじゃない…。」

　
その言葉が口癖だった。ベッドの上で呟く。

　
だって家族の中で私だけ。なぜ私なのか。

　
その考えをぐるぐると頭で考える。考えてもしょうがないのに。

　
「はぁ…。」

　
家の中の空気は重い。

　
「…あ。」

　
ふと、思ったことがあった。

　
「…花子さん達といた方が、楽しい…？」

　
あの花子さんは下品なことばかり言ってくる。だけど、八尋さん達といた方が楽しい。

楽しいや。学校の方が。

　
「早く、明日が来れば良いのに。」

　
私の中に不安はなく、ただ…早く明日になれと願っていた。