硝子の心臓、手折れの脊椎／ito ページ22
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ふわふわと意識が上昇する。自力で起きた時特有のぷかぷかと海の底から浮かび上がるような感覚。
気持ちの良い感覚に少し浸ってから一、二度瞬きをするとだんだんと意識が覚醒していく。自分の部屋、じゃない。そうだった幸司君の家に泊まったんだ。
もそりと重い上半身を起こしぐぐ、と背伸びをすれば背中はばきばきと自身が脊椎動物である事を証明する。ふわふわと揺れるカーテンの間からは昇りかけの朝日がてらてらと朝雲を照らしていた。起き抜けの目には強すぎて網膜がじりじりと焼けて目の奥がきゅうとする。
じぃじぃと早朝から蝉は大声で元気に鳴いている。べったりと首元に張り付いた髪を肌から剥がしているとシャンプーの匂いが鼻腔をくすぐる。
幸司君とお揃いのシャンプー、お揃いの柔軟剤。でもきっとそれは今だけ。今日の夜にはこの髪の匂いは私の使っている物に上書きされて、今日家を出る頃には自分の服に着替えている。
そんな事をゆるゆると考えていても幸司君は隣ですうすうと規則正しく安らかな寝息をたてている。そのすぐ横にはぎっしりと本が詰め込まれた本棚が並んでいる。毎度毎度ここに来る度に危ないなぁ、と思う。地震とかがあったときにぺっちゃんこになってしまう。
ああでも一緒に死ねるのならそれでも、良いのかな、なんて考えていても体はじわじわと熱に蝕まれる。
それにしても暑い。エアコンが効いていないこの密室は随分と蒸し暑い。こんな考えをしてしまうのは脳が蒸されたからだ、きっと。
幸司君を起こさないように薄いブランケットを静かに捲りぺたぺたと床の下の物を踏まないように冷蔵庫に向かう。ひんやりと冷気を帯びたラムネが冷蔵庫の真ん中で鎮座している。炭酸は苦手だけど頑張ればきっと飲めるはず。何より昨日幸司君が美味しそうに飲んでいた姿を見てしまっていたから私も飲んでみたい。
少し濡れているラムネを手のひらで拭う。床にラムネを置いてラムネの口に玉押しをぐ、と押し付けるとカランコロンと軽快な音をたててビー玉が勢いよく落ちる。
幸司君が開ける様を隣で見てて良かった。きっと私だけじゃ分かんなかった。少し口に含んだだけで刺さるような刺激が舌に感じられる。少しずつなら飲めるかもしれない。うん、大丈夫。
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白昼夢(プロフ) - カエデさん» カエデさんお久しぶりです！私の話や言葉遣いがお好きと仰っていただけてとっても嬉しいです☺️カエデさんのリクエストに沿ったお話が書けて、カエデさんに読んでいただいて幸せになっていただけたようで私も幸せです〜🎉 (2023年4月4日 2時) (
レス) id: c583532045 (このIDを非表示/違反報告)
カエデ(プロフ) - リクエストさせていただいたカエデです。引き金に指を掛けて、今 拝見させていただきました…！主さんの作るストーリーや言葉遣いがとても好きな上に自分の好きなシチュエーションでお話を見る事ができてとても幸せです。ありがとうございます！！ (2023年4月3日 3時) (レス) id: 1e00067a9a (このIDを非表示/違反報告)
白昼夢(プロフ) - 里佳子さん» コメントありがとうございます🙇♀️お褒めの言葉を頂けてとても嬉しいです、こちらこそ里佳子さんの作品を毎回楽しく読ませていただいています😌遅筆ですがこれからも頑張ります☺️ (2022年4月6日 20時) (レス) id: c583532045 (このIDを非表示/違反報告)
里佳子(プロフ) - はじめまして。感想が浅くて申し訳無いのですが、もうめちゃくちゃ好きなお話ばかりです…。白昼夢様の語彙力が素晴らしくて、ドキドキしつつも感動しています！これからも応援させてください😌 (2022年4月6日 5時) (レス) id: 0670838cd9 (このIDを非表示/違反報告)
白昼夢(プロフ) - のどかさん» 読んでいただけて嬉しいです！のどかさんにきゅんきゅんしていただけた小説を書けて良かったです☺️だいすきだなんてそんな、勿体無いお言葉をいただけて嬉しいです😌遅筆ですがこれからも頑張ります🙌 (2022年2月28日 21時) (レス) id: c583532045 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：白昼夢 | 作成日時：2022年1月16日 21時
