14留守番2-4 ページ29
包装を断って布をそのまま受け取り、歩き出したところで、
『なんか…オビがそういうの買うのってちょっと意外』
「…まあね。A嬢、ちょっとこっち」
Aが思ったことをそのまま口にすると、
オビは苦笑しながらAの手を引き、人通りの少ない路地へと歩いていく。
そこで立ち止まり、Aに向き直ると、
オビは「失礼」と一言添えてから、そっと手を伸ばし、Aのフードをゆっくりと下ろした。
『！』
そして、驚いて固まるAの頭に、今しがた買ったばかりの布をふわりと被せる。
Aの視界を、淡いオレンジが柔らかく染めてーー
「……うん、やっぱりよく似合ってる」
目を瞬かせるAを見つめ、オビは満足そうに微笑んだ。
「これなら顔も見えるし。A嬢にはこういうほうがずっと似合ってて、かわいいよ」
『！ なっ、か、かわ……っ！』
言葉の意味を理解した途端、Aの頬が一気に熱を帯びる。
「…前にも思ったけど、A嬢ってかわいいって言葉に弱いよね。言われ慣れてるだろーに」
『そん、な…オビ以外に、そんなこと言う人なんていないよ…！』
赤くなった顔を両手で隠しながら、しどろもどろに返すAに、
オビは面白そうに目を細め、その顔を覗き込んだ。
「本当に？ こんなにかわいいのにねぇ」
低く落とされた声が耳元を掠め、Aの心臓が大きく跳ねる。
間近に迫る金色の瞳に思わず後退るが、すぐに背中が冷たいレンガの壁に触れ、それ以上下がることも出来なくて。
『オ、オビ…！ 近い！』
ようやく絞り出した声は、抗議というには弱々し過ぎていて。
オビは一瞬だけ迷うような表情を見せ、やがてゆっくりと身を引いた。
「……ごめんA嬢、ちょっとからかい過ぎた」
少し困ったように笑うオビを、Aは涙目で睨む。
『ほんと、心臓に悪いからやめてよね。
……けど、これはありがとう』
視線を逸らしながら小さく告げるAに、オビはふっと柔らかく笑った。
「どういたしまして」
『…あ、お金…』
「それはいいって。俺があげたくて買ったんだから。
また街に出るときにでも使ってよ」
『…うん。ありがとうオビ』
柔らかい布越しに見える世界は、いつもよりほんの少し温かく、穏やかで。
少しはにかみながらも嬉しそうに微笑んだAに、オビも同じように笑みを返した。
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ミツ(プロフ) - つむぎさん» コメントありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです。亀のように遅い更新ですがのんびり続けていきますので、今後もよろしくお願いします！ (10月18日 13時) (
レス) id: b504e5d402 (このIDを非表示/違反報告)
つむぎ(プロフ) - 初コメ失礼します！面白くて一気読みしてしまいました！オビと夢主のやり取りにキュンキュンしながら読んでました！更新楽しみに待っています！ (10月18日 10時) (レス) @page50 id: 714019d982 (このIDを非表示/違反報告)
ミツ(プロフ) - 未来さん» コメントありがとうございます！毎週ワクワクしていただけているなんて、とっても嬉しいです！励みになります！今後もなるべく週1更新目指して頑張りますのでよろしくお願いします。 (7月31日 22時) (レス) id: b504e5d402 (このIDを非表示/違反報告)
未来(プロフ) - コメント失礼します。続編おめでとうございます！白雪たちやオビとのやりとりがとても可愛くて、次はどんな展開になるのかと毎週ワクワクしています。これからも応援しています！ (7月31日 21時) (レス) id: 1e1a763177 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ミツ | 作成日時：2025年7月31日 15時
