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は?と思ったその瞬間。携帯電話を当てていた耳をぬるりとした感触が襲った。
「げこっ!」
怯んだ拍子に手から滑り落ちた携帯電話──いや
「...まさか」
振り向くと──ここには居ないはずのジョジョがいた。
「...帰ってきてるなら言ってくださいよ。びっくりするじゃあないですか」
「さっき帰ってきたばかりなんですよ」
Aの部屋の前。対峙するぼくらの間には緊迫した雰囲気が流れていた。
ジョジョの表情や静かな声からは、喜怒哀楽といったものがまったく読み取れず、逆に恐ろしい。
「迎えてくれた部下にフーゴはどこだと聞いたら、Aの部屋に向かうところを見たと言う。まさかと思ってこの部屋が見える場所から電話を掛けたら...ハハッ」
すべて仕組まれていたということか。カルドゥッチ氏の娘の話も嘘だろう。
「それでフーゴ。ぼくの可愛い妹と真っ昼間から部屋で二人っきり何をしていたんだ?」
返答によっては殺す。そういう眼をしていた。
──おそらくジョジョは勘違いをしている。
知っての通り、ぼくがAの部屋に通っているのは彼女にイタリア語を教えるためだ。
それを言い出したのはAだし、どこで勉強しようかとなった時、私の部屋はどうでしょう?陽当たりも良いですし...と提案してきた
のも彼女である。
恥じるようなことは何もしていないし、起こっていない。
ジョジョは本来聡明な人だ。ちゃんと釈明すれば、多少は騒ぐかもしれないが矛を収めてくれるだろう。
だが。
「......言えない」
ぼくはAと約束した。兄さんには言わないでくれと。
照れくさそうに小指を絡めてきたA。
熱心に宿題に取り組むA。
少しずつ、同じ言葉が使えるようになっていくA。
彼女の願いを尊重したかった。
「へえ...」
黙りこむぼくに、ジョジョの整った眉がつり上がる。
緊迫を超え、もはや絶対零度の空気の中で、ぼくはジョジョと向き合う。退くわけにはいかない。
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あさはか金魚(プロフ) - 面白い!こんな面白い作品を作っていただきありがとうございます!! (2020年8月2日 10時) (レス) id: bae01be7f3 (このIDを非表示/違反報告)
伯(プロフ) - tamaさん» コメントありがとうございます!最初にコメントくれた方ですよね?ずっと読んでくれていたこと、感謝します。これからも頑張ります! (2019年11月14日 0時) (レス) id: bb5d92349b (このIDを非表示/違反報告)
tama(プロフ) - お久しぶりです!31話からもうわくわくでした!頑張って! (2019年11月12日 20時) (レス) id: 85d88e1cc2 (このIDを非表示/違反報告)
伯(プロフ) - 美琴さん» コメントありがとうございます!楽しんでいただけてなによりです!ハロウィン後半のテーマは『あの人達と一日限りの邂逅』です。もう11月ですがまだハロウィン回は続くので楽しんでいただけると嬉しいです! (2019年11月12日 1時) (レス) id: bb5d92349b (このIDを非表示/違反報告)
伯(プロフ) - 幽銀さん» コメントありがとうございます!作者も読んでくださる読者の皆さんがいっぱいしゅき…… (2019年11月12日 1時) (レス) id: bb5d92349b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:伯 | 作成日時:2019年9月3日 4時