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名残惜しげにひとり商談へと向かったジョジョを見送ると、部屋にはぼくとAが残された。
今回の商談だが、当初はぼくも同席する予定だった。
しかしジョジョの｢目が覚めたら部屋に誰もいないなんてことになったらAが悲しくて泣いちゃうかもしれないでしょう？｣という一声で、ジョジョの部屋に待機することになったのだ。
そうそう、｢ないとは思いますが、もしもあの子に変なことをしたら、君に7ページ半に渡るラッシュを叩き込みます｣とも言っていた。脅迫である。
｢言われなくてもそんなことしませんってば｣
苦笑して、すやすやと眠るAに目をやった。穏やかな寝顔に安心する。彼女の安らぎを邪魔するなんて、とてもじゃあないができない。
そうだ。時々ジョジョが仮眠用に使っているブランケットを掛けてあげよう。
確か戸棚に閉まってあったはずだ、と一歩踏み出そうとした時。
｢んんっ...｣
振り返ると、Aがぼくの服の裾を引っ張っていた。...意外と力強いなこの子。
｢にいさん...｣
半開きの目に、たどたどしい声。そして、にいさんという言葉。
｢...寝ぼけてます？｣
｢......あッ！｣
Aの顔が真っ赤になった。
.
｢見間違えてすみません...金髪で背丈も同じくらいだったのでつい...｣
｢いえ、気にしてませんよ｣
｢は、恥ずかし...｣
すっかり目が覚めたAは、手で口元を覆い縮こまっている。
Aはしばらく身悶えていたが、ふと何かに気づいたように目を見開いた。
｢日本語、喋れるんですか？｣
｢ジョジョに貴方を紹介されてから勉強しました。まだ少ししか話せませんが｣
｢そんなことないです！とってもお上手です！｣
感心した様子でぱちぱちと小さく拍手するA。
知らない土地で言葉の通じる相手が一人では心細いだろうと、日本語のテキストを取り寄せた甲斐があった。あと、ぼくの頭脳が優秀で良かった。IQ152は伊達じゃあない。
｢そういえば兄さんは？｣
きょろきょろと部屋を見回すAに、仕事に向かったと伝える。
｢そうですか...兄さん、やっぱり忙しいんですね｣
Aはがっくりと項垂れる。ええと、日本語で慰めの言葉は何だったか──
｢あの、フーゴさん｣
ぼくが答えを導きだすより前に、Aは顔を上げた。ジョジョに良く似たその顔には、何か決意めいたものが感じられた。
｢私にイタリア語を教えてくれませんか｣
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あさはか金魚(プロフ) - 面白い！こんな面白い作品を作っていただきありがとうございます！！ (2020年8月2日 10時) (
レス) id: bae01be7f3 (このIDを非表示/違反報告)
伯(プロフ) - tamaさん» コメントありがとうございます！最初にコメントくれた方ですよね？ずっと読んでくれていたこと、感謝します。これからも頑張ります！ (2019年11月14日 0時) (レス) id: bb5d92349b (このIDを非表示/違反報告)
tama(プロフ) - お久しぶりです！31話からもうわくわくでした！頑張って！ (2019年11月12日 20時) (レス) id: 85d88e1cc2 (このIDを非表示/違反報告)
伯(プロフ) - 美琴さん» コメントありがとうございます！楽しんでいただけてなによりです！ハロウィン後半のテーマは『あの人達と一日限りの邂逅』です。もう11月ですがまだハロウィン回は続くので楽しんでいただけると嬉しいです！ (2019年11月12日 1時) (レス) id: bb5d92349b (このIDを非表示/違反報告)
伯(プロフ) - 幽銀さん» コメントありがとうございます！作者も読んでくださる読者の皆さんがいっぱいしゅき…… (2019年11月12日 1時) (レス) id: bb5d92349b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：伯 | 作成日時：2019年9月3日 4時
