【浦島坂田船】防音シェアハウスにて大暴走中

85曲目　残せたもの ページ35

目を開けると、朝だった。



硬いフローリングの上で寝ていたため、身体が痛い。

微かな頭痛に顔を顰めながら周りを見渡すと、他の四人も今起きたのだろうか、皆あくびやら伸びやらしていた。



「…あれ。何で俺こんなところで寝てんだろ」


「奇遇ですねうらたん。センラも全く憶えとらんのですわ。確か昨日は、」


「うらさんがAを連れ回しとったから、センラとまーしぃと俺の三人で飲んどって、」


「二人が帰ってきてから更に飲んで…駄目や、こっから記憶無いわ」




どうやら皆私にベタベタした記憶が無いらしい。

四人と比べてそこまで飲んでいない私は全て覚えているのだが。


…今回は夢のことも全て。


今まで見た夢、いや、“何もない世界”の出来事の記憶が今の私にはある。

今日の今日まで、あの世界にいる時以外では記憶になかったのに。

それが、あの世界の最期を裏付けている気がして少し胸が痛むが、私はもう忘れない。


この、不思議な出逢いを。彼らの存在を。


そういえばまだまだ謎が多い世界だったな、口振りとか、私や現実の彼らがお互いに何も意識していない時からスキンシップが多かったりとか、もしかして未来から来てるのでは？

といったように彼らとの思い出を振り返っていると、ふとあることに気付く。

そういえば…



「私のファーストキス、坂田さんだ」



夢でも、現実でも。しかも口移しだったなぁ。



「「「「！？」」」」



四人がまるで一瞬で石化したように固まる。

あ、さっきの結構爆弾発言だったか。



「何しとんのや坂田ぁぁぁぁぁぁぁ！！」


「せ、センラやめて！怖い！包丁持ってこっち来ないで！」


「お前何勝手に人の嫁に手ぇ出しとんねん！
他にもあんなことやこんなことしとらんやろうなぁ！？」


「し、してないしてない！…多分」


「多分！？多分って何だよ坂田やっぱりAに、あ、あんなこと、やこんな、こと…あー、んー、
あっそうだまーしぃさっきの嫁ってなんだよ、Aはお前の嫁じゃないだろ！？」


「何照れとんねん！きもいわぁぁぁぁぁぁあ！！」


「センラ君止めて！フォーク部屋中に投げないで！壁に刺さっとる、刺さっとるから！当たったらアウトやから！」




おお、これがchaos。

いつもニコニコあなたの隣に這いよっていらっしゃるのですね。



私があの時、会いたいと願い叫んだ人たちは、
きっと目の前にいるこの人たちでもあるんだろう

と思いながらフォークを片付けた。

86曲目　白髪→←84曲目　*叫べ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す