【浦島坂田船】防音シェアハウスにて大暴走中

54曲目　観る ページ4

「…クオリティ高いですね」


「そらまぁ、ライブですから」




キョンシーの格好をしたセンラさんが、ニコリと首を傾げた。



お誘いを頂いてから、沢山の練習を重ね、あっという間に本番が来た。

私も猫耳パーカーで超簡易的な仮装をしている。



「どや、リアルやろ。怖いかぁ？」


アーミーゾンビの仮装をした志麻さんが銃を肩にかけポーズをとり、口を妖しく開ける。

確かにその顔はメイクによりグズグズなゾンビでリアルだった。



「怖いですね」


「ちょ、反応薄ない？」


「だって、志麻さんだとわかってますから。怖いも何も…」



確かにそやねぇ、とセンラさんがカラカラと笑う。志麻さんは驚いたような表情をした後、顔を逸した。

談笑をしていると突然、後ろから布のようなものが私の頭を覆い隠す。



「Aー。魔法をかーけちゃうぞー」


「こら坂田、本番前に衣装で遊ぶな」


「へーい」


「その台詞賢者より魔法使い感強いなぁ」


「ままセンラ君、坂田やから」


「まーしぃなんて去年からゾンビやん！」


「んなこと言ったらセンラ去年から変わりませんのやけど」


皆が話す中、うらたさんの手によって布が取られる。

どうやら私を覆った布は坂田さんの衣装だったようだ。


坂田さんは賢者、うらたさんはルシフェルの仮装だ。



四人全員、派手な格好をしていて、なんというか重そうである。




「そろそろ、Aとはお別れだな」


「わかりました。

ライブ、楽しみにしてます。頑張ってください」




うらたさんに手を引かれ、楽屋の出口へ向かう。


全員、それぞれが意気込みと手を私に向けた。

その顔は笑っているが、緊張と高揚感の入り混じった複雑なもので、私は彼らの成功を心から願ってお辞儀をしてから外へ出た。







それが、たった数時間前のことだった。


今はライブの真っ最中。





ステージで、四人が歌っている。

お客さんの熱気は凄まじく、ペンライトを振り、声を張り上げ声援を送る。

それに応えてどんどんテンションが上がっていく四人。

それは、私が今まで聴いてきた歌声の中で、どれよりも一番感情が入っていた。




この場の全員が笑っていて、輝いている。





ああ、これが貴方達の世界。


私は、この世界に圧倒されると共に、魅了されていた。




スピーカーから流れる轟音が心地良く感じる程に、私はこの歌が終わらないでずっと続けばいいと思った。









何ですかこれ。



「かっこいい」

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