【d!】アンモビウムを抱えた君へ 2

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『初めまして、AAと申します』


あれは茹だる様な夏の日の事。男ばかりの空間に二人、むさ苦しさを感じさせない存在がいた。一人はA国の後援者(S国)から預かっている娘役の女、アリス・マリーゴールド。密偵としての一面を上手く隠し、発展途上国の出身とは思えない気品さを繕っている。おかげで他国の介入が悟られる事も無い、はずだった。不和を生み出したのはマリーゴールド以外にもう一人、異なった清涼感を纏いながらこちらに笑みを向けた女、AA。その可憐な様を目の当たりにし、引き連れていた部下達は立場を忘れ、こぞって頬を染め間抜けヅラを晒していたのを嫌でも覚えている。斯くいう俺は…腹の底で抑えていた不快感を煽る材料にしかならなかった。

当たり前の話だ、何故こんな小娘が国の顔のひとりとして表舞台に立っているのだ？聞けば参謀としても兵士としても、実力は近隣国トップクラスという。どうせ色目を使って権力を物にしただけに過ぎないだろう、そう思えば目の前で幹部という肩書きを持つ男達も大した存在では無い。その証拠にマリーゴールドを貴賓として斡旋した後、Aの立場は目に余るものだった。肩書きこそ残っているものの、事実上左遷されたも同義だ。こればかりは高い金を払った甲斐だろうか、ハニートラップを使うまでも無かったと報告にはあったが、きっとその辺り器用に仕掛け上手く潜り込めたらしい。それにつれAAの地位は崩れ、あれだけ仲間意識をアピールしていた連中からも"無能"と称され、見限られたらしい…実に痛快な話だ！しかし、まさかこの後に及んでマリーゴールドを完封するとは…予想外ではある。体制が傾いている今のうちに、彼女の跡を継ぐ参謀の存在を潰すべきか…そう思案していると、煙の向こうの気配が沈黙したのが分かった。


「その女の死体を運べ。…晒し上げた姿を、お仲間さんに見せつけてやるのも悪くない」
「はっ」


この女のおかげで、彼らの歪んだ顔を拝むという愉悦に浸れそうだ。傍らの部下に指示を出し、この目でその死に様を納めようと立ち上がり、歩を進める。戦況も多少圧されているエリアこそあるもののこちらが優勢だ、何せS国の支援もある。戦意を削ぐ一手くらいにはなるだろう…しかしそれは、目前の呻き声によって遮断されてしまった。

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