【d!】アンモビウムを抱えた君へ 2

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『…A』
『ん？』
『ワシって、やっぱ心無いんかな』
『…心が無いんじゃなくて、きっとロボロの心の声は他の人に比べて小さいだけなんだと思うよ？』
『…なんやそれ、背だけじゃなくて器まで小さい言うんか。…心無いって言われるより、嫌やわ』
『そーじゃなくて。それだけ自分よりも周りの声をたくさん聴いてくれているんだって、私は思うけどなぁ』
『……え？』
『だってそうじゃなきゃ、こんなにも他人の為に涙してくれることなんてないよ』


そう言って俺の頭を撫でる手も、眼差しも、とても優しくて。こんな俺でもちゃんと見てくれている人はいるんやって、胸のあたりが温かくなった気がしたんや。なぁA、俺ばっかり助けてもろて、お前のこと助けられなかった。もっとこうすれば、ああすればって、そんなことばっか考えてしまうんや。こんな俺でも、ええんかな？


「……うお、ビックリした。居るなら電気つけたらどうや」
「あ…すまんすまん。考え事してたら、日暮れとったの気づかんかったわ」
「…ならええけど。ほい、今度の作戦の資料」
「ん」


手元のスイッチを押し、静かな通信室に明かりを灯す。壁の一面を覆う数々のモニターにはこの場所同様、いつも通り穏やかな日常が映し出されていた。そう、あれだけショックな事があっても…時間は残酷にも過ぎていってしまう。


「なぁトントン」
「ん？」
「Aの手記…所々紙がボロボロになってたの気づいた？」
「…おん」
「最初何でなんやろって思ったんやけど…よくよく考えたら、あれは泣きながら書き留めていたからなんやろなって」
「……」


次に渡す相手の資料をチェックしていたのであろう。部屋の入り口近くに残っていたトントンに対し、モニター前の椅子の背もたれに寄りかかったまま、ぽつりぽつりと言葉を溢した。無言の回答ということは、俺の推察はあながち間違いでないのかもしれへん。


「…あーあ。アイツ、ほんま無茶苦茶やで…何もかもひとりで背負って」
「…なに言うとるん、あんさんも他人の事言えんで？」
「はぁ？違いますぅロボロにも言われたくないですぅ〜」


冗談めいた口調も、このずしりとした空気やそれまでの疲労によって、すぐに元の落ち着いた声音に戻っておった。

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