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桐｢デルフィニウム、、シネンシス...｣
｢ふふ、はじめましてですかね? ...お花についての質問は、先にコーヒー持ってきてから受け付けますね｣
桐｢あ、はい...｣
忙しなくパタパタとカウンターの方へ戻って行った七海さん。
俺の目の前にはデルフィニウムの花が一輪挿しの花瓶に活けられてて...
こんなブルーの花を初めて見たかもしれん、ってくらい鮮やかな淡いブルーの花やった。
小さめの花がたくさん咲いてる。
そのひとつひとつの花の花びらは、とてつもなく繊細で透かしたら向こうが見えてしまうくらい薄い。
儚い、それなのに存在感は抜群にある。
不思議な魅力を持ってる花。
｢お待たせしました、ホットコーヒーです｣
桐｢ありがとうございます、いただきます｣
｢どうぞ〜｣
桐｢...ん!! うまっ!! ...美味いです...!｣
｢ほんとですか? 良かった〜! その言葉聞けただけで十分です｣
桐｢ほんま美味しい...、ちょっと落ち着きました｣
｢...あんまり、自分のこと責めたりしちゃダメですよ｣
桐｢えっ...｣
｢...あ、すみません...、何かあったのかなって...。心ここに在らず感がしたのでつい...｣
桐｢あ、いや...その、、｣
｢...デルフィニウム、花言葉があるんです｣
桐｢花言葉...?｣
｢あなたは幸福を振りまく｣
桐｢...幸福を、?｣
｢勝手にすみません...。そのカバンの中にあるもの見えてしまって...｣
桐｢えっ!? あ、この本...?｣
｢はい、保育士さん、ですよね...?｣
桐｢まぁ、一応...｣
｢男性の保育士さんって、素敵ですよね｣
桐｢え、素敵...?｣
｢ええ、とっても! 私、今密かにテンション上がってます。男性の保育士さんに会ってみたかったから...｣
桐｢...そんな風に言ってくれる人、初めてでビックリしとります...｣
ほんまにびっくりした。
会ってみたかった、なんて言われたことない。
なんでなんやろ...。
｢私、小さい頃通ってた園の先生が男性だったんです｣
桐｢えっ、そうやったんですか?｣
｢そうなんです、男性の保育士さんってなかなかいないでしょ? すごく優しい先生で...｣
桐｢はい...｣
｢いつも助けてくれる、素敵な先生でした。...ふふ、恥ずかしながら私の初恋｣
桐｢可愛ええですね、初恋が先生って｣
｢...きっと大変なことあると思います、男性ってだけで｣
桐｢...はい、｣
｢でも大丈夫、あなたならきっと｣
たった一言、今の｢大丈夫｣
ふ、と心が軽くなった気がした...。
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作者名：maoka. | 作成日時：2021年8月13日 23時
