＊＊ ページ3
キーパーの中に何があるのかすごく気になる。
けどとりあえず、なにか頼まなきゃあかんよね。
可愛らしい木製のバインダーに1枚の紙。
そこに看板と同じ字体で書いてあるメニュー。
コーヒー、紅茶、ハーブティー、カフェオレ、ミルク、ジュース。
フードメニューは軽食が少しとスイーツ。
そして...
重｢花と、ドリンクのセット...｣
メニュー表の1番下の欄にある《花とドリンク》というメニュー。
ドリンクだけより500円ほど高いそのメニューは、他では見た事がない。
なんやろ、すごく気になる...。
重｢あ、あのっ...｣
｢はぁい、今そっち行きまぁーすっ!!｣
相変わらずのゆるーい返事と共に、カウンターの向こう側からわざわざ俺の席の方まで来てくれた『ななみ』さん。
なんやろこの小動物感...。癒されるなぁ...。
｢すみませんっ、おまたせしましたぁ｣
重｢いえ、えっと...、この、花とドリンク...?｣
｢はぁい、花とドリンクですね、お飲み物何にしますか?｣
重｢あ、えー...、じゃあホットコーヒーで｣
｢ホットコーヒーですね、少々お待ちくださいっ｣
パタパタと靴の音を立てながら裏に行ってしまった。
わくわく、ドキドキ。
見たことないメニューにそわそわが止まらない。
あ、そういえば、キーパーの中、見てみよかな...。
コーヒーのいい香りが漂い始めた頃、席を立ってキーパーの目の前まで足を運ぶとやっと中が見えた。
ほんのりと明かりがついているキーパーの中には
色とりどりの切り花。
綺麗やな、...見たことない花ばっかやけど。
チューリップ、バラ...くらいしか分からへんし
滅多にお花屋さんにも行かんけど、それでも何故か
凄く惹かれてしまう。
『おまたせしましたぁ』
『ななみ』さんの声が聞こえて、ぼーっと眺めていた切り花から、はっ、と意識が戻り、足早に席に戻った。
するとカウンター越しに『ななみ』さんから
どうぞ、と渡されたのは小さな一輪挿しに飾られた赤い花やった。
重｢これは、、｣
｢今日はこのお花をあなたに...《スイートピー》です｣
重｢赤い、スイートピー...あ、｣
｢んふふ、気が付きましたか?｣
重｢あの、松田聖子さんの!｣
｢それです! その、赤いスイートピーです｣
ふんわりと笑った『ななみ』さん。
なるほど、花とドリンクってメニューは切り花をくれるんや。
柔らかい雰囲気の彼女が考えそうなメニューだな、と
またほっこりして、思わず微笑んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 49人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：maoka. | 作成日時：2021年8月13日 23時
