＊ ページ13
神｢可愛ええなぁ、アネモネちゃんと見たの初めてです｣
｢ふふ、でしょ? ...実はね、この一輪挿し、初出しなんです｣
神｢えっ、そーなん?｣
｢はい、一目惚れして...でも結構和物だから好き嫌い分かれるかな〜とか、、合う花も限られちゃうかも、って思ってなかなか使えなくて...｣
神｢俺はすっごい好きですよ! 特にこのネイビーがアネモネを引き立てていて相性抜群!｣
｢よかったぁ、神山さんならわかってくれると思ったんです!｣
神｢えっ...｣
｢だって、とってもセンスいいですし...、ほら、アパレルで働いててもやっぱり生まれ持ったセンスには叶わないでしょ? 私、その...神山さんの持ってるセンス、すごく好きなんです｣
なんか照れますね〜、なんて呑気にほわほわしたこと言ってる目の前の彼女は、いつもサラッと俺に勇気をくれる。
実は最近、自分のセンスに自信が持てなくて。
仕事を始めたばかりの頃は、洋服もアクセサリーも好きやしそれを仕事にできるって幸せや〜って思ってたけど...
現実そう上手くはいかん。
神｢ありがとうございます...。ちょっと、自信持てます｣
｢...今、ハーブティー出来るので、ちょっと待っててくださいね｣
何かを察したのか、ぱたぱたと動き回ってハーブティーの準備をし始めた七海さん。
隠したつもりだけど、やっぱり彼女には見抜かれてしまうみたいだ。
｢お待たせいたしました〜、ハーブティーです。熱いのでお気をつけて...｣
神｢ありがとう、...いい香り、落ち着きますね。...いただきます。｣
｢召し上がれ〜｣
神｢...うん、ふは、これ美味し...! ハーブティーってこんな美味かったっけ?｣
｢ふふふ〜私天才かもしれませんね! なんちゃって｣
神｢七海さんは天才ですよ、いつも｣
｢やだ、照れますね〜。...て、そうじゃないの。神山さん、...私も少しハーブティーいただいてもいいかしら?｣
神｢もちろん! ...話、聞いてくれますか?｣
｢はい、もちろん。何時間でも｣
ふわっと微笑んで、自分の分のハーブティーを、七海さん専用カップに注ぎ始めた。
初めて七海さんに話を聞いてもらった頃もそうだった。
同じ飲み物を、いただいてもいいかしら、と七海さんが言うときは話を聞いてくれる時。
カウンター越しの、この距離感が心地いい。
レモン系のハーブたちの爽やかな香りを全身に感じながら俺はゆっくり、話し始めた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 49人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：maoka. | 作成日時：2021年8月13日 23時
