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彼が東京に来たばかりの頃、
少しでも仲を深めるきっかけになればと
この家でたこ焼きをして、
たくさんのことを話して。
最初こそ真面目にグループのことを
相談したりしていたけど、
だんだんたこ焼きを作る方に
熱が入り過ぎてしまって
結局はそれぞれ勝手にアレンジして、
食べ比べて、喋って、笑って。
何を話したかなんて覚えてもいない、
でもきっとそういう時間が
私たちにはもっとずっと大切なものだった。
「ねぇ、また緊張してたの？」
「いつもはうまくいくねん、
1人でやるときは」
「ふふ、なんで緊張するの」
「しゃーないやん、Aが
俺のこと見てる思たらもう...」
2人の前に、彼が震える手で転がした
完璧な丸とは言えない歪な形が10個。
大きく切り過ぎたタコもウィンナーも、
はみ出してしまったチーズも。
全部完璧じゃなくても、私はそれでいい。
それがいい。
康二が作ってくれたっていう、
その事実だけで私は充分なの。
少し不貞腐れた様子で
その全部をお皿に取り分けて、
いつも私に綺麗な方をくれる彼が
出会った頃からずっと愛おしいと思う。
「あっ、それ俺のやつ！」
「こーじが作ってくれたのには
変わりないでしょ？」
「そらそやけど...」
「...うん、美味しい！こーじ天才！」
「え？...あぁ、ふふ。そやろ？」
関西との違いに戸惑って、
頑張り過ぎて、傷ついていた彼を
私は少しでも
支えてあげられていただろうか。
いつも周りを気遣って、
誰よりも温かい存在でいてくれる彼を
私は少しでも守れているだろうか。
その答えは、まだわからない。
出会ってからこれまでより、
もっと長い時間が私たちの先にあって。
その時間に終わりが来ることも、
この答えがわかることも多分無い。
でももし彼が少しでも笑顔でいてくれるなら
これまでのことはきっと、
何一つ間違いではないんだ。
「よし、じゃあ次は私が
こーじに作っちゃおうかなぁ」
「えぇ、ほんま？俺嬉し泣きしてまうかも」
「その前に美味しすぎて
ほっぺた落ちちゃうかもよ」
「それあかんわ、
アイドルはお顔が命やから」
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takkimakki(プロフ) - 初めまして！こちらのお話に出会い、引き込まれて読ませていただいています。綺麗な日本語と切ない描写に、大ファンになりました！ (2023年2月17日 9時) (
レス) @page30 id: ff744b84c3 (このIDを非表示/違反報告)
透(プロフ) - さん» コメントありがとうございます！更新頻度遅くなってしまって申し訳ないです！！ですが、私の都合上どうしても更新頻度字が偏ってしまうこともあるので、そういった点はご了承いただけますとありがたいです。ご意見ありがとうございます！ (2021年6月30日 1時) (レス) id: c7653d64b7 (このIDを非表示/違反報告)
- こっちも更新してほしいです (2021年6月29日 13時) (レス) id: 7d0243170f (このIDを非表示/違反報告)
透(プロフ) - Ashitakaさん» はじめまして^^ コメントありがとうございます( ; _ ; )お話を書くときはいつも印象に残るような言葉遣いをイメージして描いていたので、そう言っていただけてとってもとっても嬉しいです^ ^ぜひたくさん読んでこの作品に浸っていただけたらなと思います！！ (2021年6月17日 12時) (レス) id: c7653d64b7 (このIDを非表示/違反報告)
Ashitaka(プロフ) - はじめまして、今読んでいる真っ最中なのですが、ラウちゃんの「僕の届かない夜に連れていく」に胸がギュッと苦しくなり、思わずコメントをしてしまいました…。言葉ひとつひとつがとても素敵です。では、続きを読んで参ります…！ (2021年6月16日 15時) (レス) id: ffdf66b49e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：透 | 作成日時：2021年6月10日 22時
