３２（Fside） ページ32
ニカの名前で我に返った俺は、理性をまた失わない様に、ゆっくり宏光をベッドに横たえた
「太輔……」
「ん？」
「……手……握っ…てて…ほしぃ…」
長い不調に、宏光も不安定になってるみたい
照れと闘いながら、少しずつ俺に手を差し出してくる
「いいよ。宏光が寝るまでずっと握ってるからね。」
「ん…」
ふにゃりと笑う顔に、思わず許してしまいそうになるけど、今後の為にもここははっきりさせておかなければ！
心を鬼にする
「その前に、宏光に一つ聞きたい事があるんだけど…。」
「……ん？」
「……ニカに…好きだって、言われたよね？」
微睡みに入りかけた宏光が、はっと目を開く
「……うん。」
「その時、宏光もニカの事、好きだって答えてなかった？」
「え？俺、そんな事言ってないよ？」
きょとんとした表情…
宏光が嘘をついていない事は明らかだ
なら、あの時の言葉は俺の聞き違い…？
「実は…ニカが宏光に告白した時、俺…たまたま近くにいて…」
「え？」
「ニカが好きだよって言った時、俺もだよって答えてるの…聞いちゃったんだ…」
「…あ…それで、太輔…」
「うん。宏光はニカの気持ちを受け取ったんだって思って…」
「そっか…。……俺あの時、熱でボーッとしてたから、正直言うとあんま覚えてないんだけどさ…、」
続く宏光の言葉に、
聞かなきゃ良かった…
って本気で後悔した
まるで昨日の晩御飯を思い出すみたいに、天井を見つめながら思い出される言葉は
宏光を疑った自分が恥ずかしくなる位に破壊力を持ってた
『ニカが、俺が太輔の事好きでも関係ないって言ったから…俺も、太輔が横尾さんを好きでも、太輔の事、愛してるって言った記憶はある…』
…俺、めちゃくちゃ愛されてんじゃん///
きっとそれを口にしたら、自分の言葉に気付いて、真っ赤な顔して照れまくるんだろう
そんな恋愛に無自覚、天然な恋人を
俺はまた好きになる…
.
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作者名：MISA
| 作成日時：2018年5月31日 16時
