３１（Fside） ページ31
自分が抱いた小さな嫉妬
宏光はこんなにも俺を愛してくれているのにって…なんだか情けなくなった
零れそうになる涙を必死に堪えていたら、宏光が少し気まずそうに俺の目を覗き込んだ
「俺もね、謝る事があるんだ…。」
「…なに？」
「俺…太輔を試した。」
「え…？」
「太輔の様子がおかしい事は、少し前から気付いてた。でも…それに触れたら、何か…取り返しが付かない事になるんじゃないかって思って…怖かった。だから…お前を試したんだ。」
「…」
「もし太輔が俺の事思ってくれてるなら、今までみたく俺の体調が悪い事も気付いてくれるって…。」
「…っ…」
「どうしても太輔に気付いて欲しくて…意地になって…ニカにも、太輔には言うなって…。」
「…そっか…」
「でもそんな自分が段々嫌になって…なんでこんな事してんだろうって…。太輔に別れようって言われた時も、こんな自分は嫌われても仕方ないって……本当にごめんっ…」
「……俺達…純粋な気持ち…忘れてたね。」
「うん…。昔は、太輔が傍にいれば、それで幸せだって思ってたのに…いつの間にか、色んなしがらみに不安になって…自分の気持ち満たす為に、愛情試すような事までして…お互い…ちゃんと向き合う事に臆病になってたのかもな…」
「そうだね…。俺も…ごめんね、宏光。」
「太輔っ…」
俺の胸に飛び込んで来た宏光を、思いっきり抱きしめた
久しぶりに感じた宏光の温もりと匂い
やっぱり落ち着く…
「……ね、宏光…」
「ん？」
「俺達…もう一度やり直さない？」
「うん。俺も、やり直したい。俺には太輔が必要だもん。」
「俺もだよ。」
「ずっと一緒にいて。そして一秒でも良い。俺よりも長生きして。俺、太輔がいなきゃ生きていけない…」
宏光の潤んだ瞳が俺を見上げる
その可愛さに我慢できずにキスをした
「ん…ふっ…ん…」
「…ごめん。可愛い事言われて我慢できなかった。」
「……バカ…移るぞ…。」
「風邪じゃないから移りません。」
「くふふ。ニカみたいな事言ってる。」
せっかく甘い雰囲気になったのに、ニカの名前を聞いて思い出した
そうだ、俺、宏光に確かめなきゃいけない事がある！
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作者名：MISA
| 作成日時：2018年5月31日 16時
