１４（Fside） ページ14
撮影スタジオの隅
機材に隠れるように置かれたパイプ椅子に座って話し込んでいる宏光とニカ
渉は撮影中
手持無沙汰になった俺は、何気なく二人に近付いた
「好きだよ…ミツ。」
突然聞こえたニカの声
ザワザワとしたスタジオの中で、ニカの声だけがはっきりと耳に飛び込んで来た
思わず足を止めて、二人を凝視する
「…俺もだよ。」
宏光の言葉に、一瞬息を忘れた
宏光がニカを好き…？
ニカの真剣な表情
戸惑うような…けれど、相手を想うような宏光の横顔…
『好き』と言う言葉に含まれた感情が何なのか
頭を過った時、途端にバクバクと心臓が早まり、キーンと耳鳴りがして何も聞こえなくなった
目の前が真っ暗になって、倒れそうになるのを何とか踏ん張る
幸い二人は俺の存在に気付いていない
俺は、逃げるようにその場を立ち去った
地面がグラグラと揺れるような感覚
きっと平常な様子じゃなかったんだろう
みやが慌てて駆け寄ってきた
「ちょ、ガヤさんどうしたの！？」
「みや…」
「大丈夫？！一旦楽屋戻ろうか。」
スタッフの目に触れない様に、俺を支えながらも焦るように楽屋に押し込まれた
「はい、これ飲んで？」
差し出されたペットボトル
受け取った指は震えてた
「大丈夫？何かあった？」
眉を下げて覗き込むみやの優しい瞳に、思わず泣きそうになる
「ニカが…」
「ニカ？」
『好きだよ。』
『俺もだよ。』
ふとあの時の二人が浮かぶ
一瞬で我に返り、ふるふると首を振った
「ごめん。何でもない。」
「ガヤさん…？」
「…ちょっとライトに酔って気分悪くなっただけ。」
「え…、…大丈夫？」
「うん、もう平気。ニカに用があって探してたんだ。」
「…そっか。俺、呼んで来ようか？」
「いや、いい。急ぎじゃないから。」
きっと俺の嘘に気付いているだろうみやは、優しく微笑んで信じた振りをしてくれた
「……じゃあ、また辛くなったら遠慮なく言って？」
「うん…ありがと。」
「どういたしまして。」
みやの笑顔が、俺を冷静にさせる
話さなきゃ…
宏光の気持ち、ちゃんと聞かなきゃ…
なのに…
「ね、ニカ。今日もミツんち泊まるの？」
「うん。」
「そっか…」
ニカと健永の何気ない会話が
また俺の心を乱していく…
.
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作者名：MISA
| 作成日時：2018年5月31日 16時
