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第10話 ページ11

「おまたせ、Aちゃん……」

俺が話しかけると、彼女はパッと顔を明るくして駆け寄ってきた。

「全然!お仕事お疲れさま。」

「何か、今日すげぇ寒みぃな。」

「ね、寒いし武道くんは仕事終わりだから、はい、これ。あげる。温かくておいしいよ。」

「え、いいの?」

「うん、どうぞ。」

Aと武道はベンチに座って一緒にたい焼きを食べていた。

「武道くん、あれからどうしてたの?連絡はこっちからは取れなかったからあれだけど、近所でも見かけなかったし。」

……私が一番聞きたかったのはこれ。
何があったんだろう。どこで、どうしていたんだろう。

「あー……俺さ、中学ン時、東京卍會のヤツに喧嘩売ってさ……」

「東京卍會……今は巨大な組織だけど、昔は中学生の暴走族だったところ……よね?」

「そうそう。その東卍の清正に喧嘩で……そのー、負けちまって。毎日毎日こき使われてた。それが嫌で、何もかもほっぽって中学卒業して、こっちに逃げてきた。情けねぇよな、俺……」

「そんなことがあったんだ……」

中学時代に彼に絡みついた鎖。
そこで待っていたのは地獄の日々で、そこから逃げ出してしまいたくて、彼は何もかもを忘れようとしたんだ。

Aはそっと彼を抱き寄せた。
こんな小さな、好きな人を見ては抱き寄せずにはいられなかった。

何も気の利いたことを言えなくても、寄り添うだけなら、私にもできる。

「……Aちゃん……はさ、今何してるの?」

照れたように武道は話題を変えようとした。

「私はね、警察官になったんだよ。」

「警察官!?すげぇ、Aちゃん……」

「あはは、まだまだだよ、私もね。毎日大変だもん。」

そこからふたりで、昔の話や今のことを話したりした。

「何か、夢中になって話しちまってごめんな。」

「ううん、いっぱい話せて良かった。」

……まだ、言いたいことがあるの。

連絡先は交換したし、会おうと思ったらまた会えることはわかってる。

けどね、なんとなく言うなら今だと思ったの。

「武道くん……」

「なに?」

「好き。」

「……え?」

「初めてあったあの日から今日までずっと……私は武道くんが大好き。」

だって、もう抑えきれないもん。

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作者名:桜花 | 作成日時:2022年10月20日 21時

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