68話 ページ23
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「っ、す、みません」
──どくんどくんと、うるさく鳴り響く心臓の音。
心臓の音以外には何も聞こえない静かな空間に、よけいに顔に熱が集まってきた。
それでも新開さんの深い青色の瞳から視線をそらせなくて、ただただ黙って彼を見つめる。
見つめ合っている時間が何十秒にも何百秒にも思えて、心臓の鼓動は一向におさまらなかった。
──……ねえ、新開さん。
期待、してもいいですか。
自惚れても、いいですか?
「……あの、」
口の中が乾いて、少しだけ声が掠れた。
うるさい心臓の音が新開さんに届いてしまいそうで、やっぱり言わないどこうかと怖気付く。
それでも穏やかに目を細めてくれた新開さんに勇気を貰って、私はそっと声を出した。
「──……すき、です」
震えた声が、空気を揺らす。
弾かれたように背筋を伸ばした新開さんが、大きく目を見開いた。
「……え」
ほとんど吐息のような声を漏らし、文字通り固まる新開さん。
相変わらず私の心臓の音だけがばくんばくんと鳴り響いて、何だか泣きたくなってきた。やばい、やっぱり今の告白取り消したい。
「っ、やっぱりなんでも」
なんでもないです、そう下手くそな嘘を口にしかけたその瞬間、ぐ、と腕を引かれた。
え、なんて思う暇もなく温かい腕に包み込まれて、息が止まる。
──優しくて甘い、新開さんの香り。
筋肉質な腕は力強くて、……いま、わたし。
「──……俺も、好きだよ」
頭のすぐ上で、大好きな声がした。
その声が少し震えているように聞こえて、思わず顔を上げる。
至近距離で新開さんの青い瞳と視線が合って、また呼吸が止まった。
──Aちゃんのことが好き、ともう一度優しく囁かれる。
これ以上熱くなれるわけなんてないのに、ぶわ、と顔に熱が集まった。
「っ、」
「顔真っ赤だ」
いたずらっぽく笑った新開さんに、また強く抱きしめられる。
ちょうどその胸のところに顔が来てしまって、彼の心臓の音が聞こえた。
私のと同じくらいに忙しく運動をしているそれに、……新開さんも緊張しているんだ、なんて。
「……告白は俺からって思ってたのになぁ」
いつも通りに聞こえるその声も、この心臓の音を聞いてしまったら可愛く思えてきてしまう。
おずおずと彼の背中に手を回すと、新開さんは少し驚いたように目を見開いて、それからとろりと幸せそうに微笑んでくれた。
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暁☆(プロフ) - 名無し20182号さん» コメントありがとうございます!!嬉しいです🥰 更新頑張りますね! (8月23日 0時) (レス) id: f3c28010ce (このIDを非表示/違反報告)
名無し20182号(プロフ) - 神作すぎて一気見しちゃいました💞めちゃめちゃきゅんきゅんします!!更新応援してます❕ (8月17日 21時) (レス) id: f1e05d66bf (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - ちるちるさん» コメントありがとうございます!! 嬉しいです、頑張ります😭 (5月31日 14時) (レス) id: f3c28010ce (このIDを非表示/違反報告)
ちるちる(プロフ) - めっちゃ面白かったです!!ドキドキしました…!続きが楽しみです!更新頑張ってください!! (5月31日 3時) (レス) @page27 id: ace1fac0f2 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - 新規オタクさん» コメントありがとうございます!🙇♀️ (2023年1月30日 13時) (レス) id: f3c28010ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暁☆ | 作成日時:2020年12月14日 21時