018 Maria ページ19
＊
まるで気がない、という訳ではない。
それが、死ぬほどたちが悪いところでもある。
...全く、先生もずるいことするよね。
「...ただのお気に入りなのか、本気なのか、
はっきりしろっつの全くあのバカ教師」
ぼそっと呟いたら、Aが目の前で首を傾げる。
あーあ、そんな可愛い顔で困った表情して。
あんたのせいじゃないけど、あんたのことよ。
「もし松村が本気だったら、お前はどうすんの？」
少し前、涼がそう聞いてきたことを思い出す。
多分、彼的には「応援とかはしないよ」とか、
そんなようなことを言ってほしかったんだろう、
って、それくらいは分かる。
Aの先生への気持ちも、
先生がAを可愛がってることも、
Aを傷つけないためには応援しちゃいけない。
涼は涼なりにいろいろと考えて、
その結論にたどり着いたはずだから。
それを、彼女を支えられる人間の1人として、
わたしと共有したかったんだろう。
...でもわたしは、同じ結論を即答できるか、
って聞かれたら、それはできなくて。
だって、本気の想いに立場は関係ないと思うのだ。
それで、その気持ちが同じなら、叶うべきだって。
『...分かってるよ、ただの部活の一環だって』
「うん、」
『...でも、2人きりで、学校じゃない場所で、
先生の好きなものを一緒に見るなんて、』
そんなの、まるで、デートみたい。
言葉にしたら怖いからか黙ってしまったけど、
Aがそう言いたいことは十分分かる。
だって、わたしも話を聞いてそう思ったし。
Aが見つめる先には、離れの校舎の美術室。
先生は今も、あの隣の準備室にいるんだろうか。
何を考えるでもなく、何気ない瞬間だからこそ、
あの人がいるかも知れないというだけで、
美術室をじっと見つめ続ける、
Aの気持ちはどこまでも真っ直ぐで、本物だ。
わたしは涼とは少し違って、
そのAの気持ちは素直に応援してあげたい。
...だからさ、先生、本気なら。
今すぐAの手を取って、離さないであげてよ。
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作者名：りり | 作成日時：2019年9月1日 20時
