煉獄家の女中が鬼殺隊に入らない理由【煉獄杏寿郎】

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-Aside –


正直このような事件は後を絶たない。



先日、私の入浴中に

杏寿郎は忘れ物と称した手ぬぐいを探しに

浴場にズカズカと入ってきた。




私が人差し指に切り傷を負えば

躊躇なく彼は私の指を咥えるし、


止血するまで出血部分を容赦なく舌で撫で回す。


この手のものは日常茶飯事である。





いつもより多い仕事量をこなした時

頭を優しく撫でられることも、


可愛いと褒められることも、

正直もう恥ずかしい。






彼風に言えば、心臓の鍛錬であるが

どうも私は納得がいかない。





というのも、

彼からは全くの下心が感じられないのだ。



言い換えれば、

私だけが彼のただの善意に泳がされ、

打ちのめされているということである。





…何を隠そう、

彼の対応は10年前から変わっていない。





10年前、

私が女中としてこの屋敷に越して来たあの日から、


彼の優しさと面倒見の良さ

そしてそれ故の少々行きすぎた行動は、

全く変わっていない。





確かにあの頃の私は少々不器用で、

女中として至らない点は沢山あっただろうし、

不甲斐ないことに、

同じ歳の杏寿郎にも心配と苦労はかけた。




しかし、

互いが幼子であれば問題にならなかったことが、

この年になればどうしても問題になる。




私がそんな彼の珍行動に戸惑い、

惑わされるようになったのは

約３年前からである。

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