煉獄家の女中が鬼殺隊に入らない理由【煉獄杏寿郎】

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ーAside ー


朝から昼までは女中としてこの屋敷で働く、

私の仕事量は少なくはない。




この家に住む男三人の身の回りの世話から

炊事、洗濯、掃除、その他諸々の家事全般。




加えて近所付き合いや、

庭にある鍛錬場所の管理までにも及ぶ。



私が屋敷を空ける際は、

ある程度の引き継ぎを千寿郎に任せている、

というのが日常だ。



A「っ…」




釜から炊き上がった白米を装いでいると

昨晩にできた傷が急に痛むので、思わず息を止める。




すると心底心配そうな顔をした千寿郎が、

私の羽織を床に引きずったままかけて来て

焦ったように口を開ける。




千「あ、兄上を起こしてきますっ」




その必要はない、と止めにかかる前に


その声は聞こえて来るのだった。





杏「俺はここにいる」





任務後、未だ4時間と経たないのにも関わらず、

寝癖をつけたままの彼は

いつもと変わらぬ笑顔で起きてきた。




貼り付けたようなその微笑みに嘘はないのだろうが、

時々それは疲労まで隠してしまうため

私はいつも心配だった。




千「兄上！！」



もうお目覚めになったのですね、

と嬉しそうに駆け寄る千寿郎の姿は

ただの弟そのものなので、思わず笑ってしまう。




ここ最近の鬼殺隊は激務を極めていたので、

兄弟水入らずの時間が少なかったことは

誰も否めない。



千寿郎の子犬のような喜び方も、

納得のいくものである。




A「お早いですね。

　 先にお風呂になさいますか？」




昨晩はよほど疲れていたのか、

お風呂に入る前に眠ってしまった彼を

気遣いそう問うてみるも、彼からの返事はない。




そればかりか、

カッと開いたままの瞳がこちらを捉えたまま

彼はただ真っ直ぐに私の方へ歩いてくる。




思わず茶碗としゃもじから手を離した私は


予測不能な彼の行動に、

身構えることしかできずにいた。




千「…？」




そのまま私の目の前まできた杏寿郎は、

その筋肉質の右腕を私の腰に回して、

グッと持ち上げるのだった。




A「ひゃっ」



千「兄上っ！?」




あまりに突然のことに、不意に出た声に羞恥を感じ、

私は彼の右腕に抱かれたまま赤面した。




杏「？」



赤面する私に違和感を覚えたのか

少し不思議そうな表情を浮かべる杏寿郎を

私は直視できずにいた。

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