ねぇ、心中しよっか？ (ページ2)

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癪に障る事をした。愚かな自分に憎悪しか湧いてこない。ふつふつと兄の顔は険しくなってくる。どうしよう、馬鹿だ。馬鹿だ馬鹿と自分の事を罵る事しか出来ない事を無知だの、浅学だの言うんだろう。

「お兄ちゃ……」

「なに？」

「こ、これはお断りしたんだけど、どうしても一読して欲しいって言われたから……。その。」

「は？読む？Aがその気あんの？」

そういうと私の手を力一杯握り締めた。血管がグッと締まり骨が歪みそうなくらいギチギチと締めた。

「痛い、離して…。」

両手をグッと掴まれるものだから溜まったものじゃない。抵抗しようにもその手が無いんだから…只ひたすらに耐えるしか無いのだ。

「おに……ちゃ…！」

「は……ご、ごめんA。痛かったよね。ごめん。ごめん」

と今度は対照的に壊れ物を扱うかのように体を引き寄せて私を包み込んだ。ごめんね。と幾度となく耳元で呟いたり、

お兄ちゃんが居れば全て良くなるでしょ？と私の頬を包みながら、つらつらと兄さんに対する愛情の話を何遍も繰り返し言われる。

「お兄ちゃんは心配なんだよ？Aが他の男達に変な目で見られると嫌なんだ。」

「うん、うん。大丈夫だから。」

兄はそっかと言い残し名残惜しく私の口にキスを落とす。兄はまた何時も優しい目になっているのを確認して自室へ入り込んだ。

両腕を見てみると手跡が赤くくっきり残っていた。指で少し押してみるとピリっとして痛い。
私はその手を隠すかのように制服の長袖を通した。

再び下の階に降りると兄はもう既に仕事に勤務したのか居る気配は無かった。

そして少しホッとした自分だけが取り残されていた。