しろいパズル ページ3
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まるで色のない世界に来てしまったかのように、四角い空間は白で静まり返っていた。統一感のある、とは言えるが矢張りここまで白いと気色が悪い。_____否、ここはそういう場所であった。
病院 と聞いて良い思い出のある人間はあまりいないのではないか。清潔感のある空気は張り詰めていて冷たい。その上針は此方を向いていて、仕切りのカーテンは風が吹くたびに染み込んだ消毒液の香りをばら撒いて笑っている。
そういう場所だと思うしかないが、この部屋に閉じ込められていたら頭がおかしくなりもするだろう。ショート寸前の脳で何を考えたかといえば、「 白馬に乗った王子様が迎えに来てくれないか 」という絵空事である。見事にぶっ飛んだ思考回路だが許してくれ。ありえないことを望むほどストレスは大きく膨らんでいたのだ。
空が青い夏の日だ。焼け付く蝉の音に耳を焦がし、エアコンの効いた室内で孤独を謳う。汗ばむ手でシーツを握れば、また蝉の声に急かされるように外の世界を乞う。
頭が痛い。何か嫌な予感がする。割れそうなほどに痛い。痛い、痛い。耳鳴りがしてきた。ナースコールに手を伸ばす。
そこで、焼け付く夏の日、白い白い病室に一輪の青い花が咲いた。
_____と
何かが聞こえた。蝉の声に混じった何かは微かに鼓膜を震わせる。
_____…ちょっと
今度ははっきりと聞こえた。何処かで風鈴の鳴る音がする。ちりんちりん、耳に届いたのはひとつの音。
「 ねぇちょっと！ 」
「 うわ！ 」
一気に現実に引き戻される。目を瞬かせて声の主を探すとそこにはすらりと人が一人。ぼんやりとした視界は瞬きをしたことでクリアになる。
「 ………え？ 」
蝉の声がした。それを追う小学生の声も聞こえる。目の前の光景はどうも信じがたいもので、身動ぎして考える。
_____現実に、引き戻された筈ではなかったか。
「 ちょっと、聞きたいことがあるんだけどぉ 」
そこには思い描いた“ 白馬に乗った王子様 ”が居たのだ。信じられない、まさか本当に叶うだなんて。然し病室は馬OKだったのだろうか？
……と、少しの違和感を感じたところで視界はシャットダウンされた。
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作者名：ねむい | 作者ホームページ：
作成日時：2018年4月25日 5時
