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その日彼女は 記録会の最高記録をマークして陸上界から姿を消した。
次の日彼女は 絵と俺を残して夢ノ咲学院から消えた。
「 セナ、Aの放浪癖なんて最初からわかってただろ〜？すぐ帰ってくるって！ 」
「 あんたがそれ言う？ 」
以前の音符の上に違う色で音符が生み出されていく。彼女がいない美術室には用がないのに、何故か来てしまうのは少しの期待があったから。もしかしたら美術室にいるんじゃないか とか、多分そんなもの。
「 あ、王さま。モナ・リザの上は書かないでねぇ 」
「 あぁー、危ない！ 」
五線譜を引く五色のペンはモナ・リザの数センチ前で止まる。この絵に愛着が湧いてしまったというかなんというか。
「 セナ、寂しそう 」
「 …なわけないでしょ 」
目の前にあった英和辞典をペラペラとめくった。最近彼女がこの部屋に持ち込んだもので、B のページの端が折れている。絵のタイトルをつけるため だそう。
「 …ここにいても意味ないしねぇ。帰ろっか 」
「 おうっ 」
満面の笑みの王さまと脳裏に浮かんだ彼女の顔が重なった。“ 天才 ”という面でも、二人は似ているのだ。
王さまが学院に来なくなったあの日、俺は一人の“ 天才 ”を見殺しにしてしまった。目の前で、見ていたのに。
また一人、見殺しにしてしまったというのか。少しでも彼女の苦痛に気付いていたら なんて考えるとキリがないから 考えるのをやめた。
「 うっちゅ〜☆ 」
「 えっ 」
隣で王さまが叫び出す。流石にびっくりして目を見開いた。
「 ほらセナもうっちゅ〜☆ 」
「 …う、うっちゅ〜？…ってなにやらせんのぉ！ 」
「 下ばっかり見るな！ほら、上を見たら無限の宇宙が広がってるぞ〜！ 」
その言葉にハッとして空を見上げる。今日は晴れているから、星が綺麗だ。きっと学院の近くの海だったら、もっと綺麗に見えるんだろう。
あの青い星はなんなんだろうとか、あれはどんな星座なんだろうとか。湧き出る疑問はたくさんあって、彼女が見つかったら聞いてみようか。
「 …王さま 」
「 ん？なんだ？ 」
「 ……ありがと 」
王さまは目を細めて笑った。まるで二人だった頃に戻ったみたいで、懐かしかった。何回でも聞いた昔の下手な自分の歌は耳に染み付いている。
「 セナ 」
「 なぁに？ 」
「 …A、一緒に探そ 」
「 ……うん 」
ねぇ、今どこにいるの。
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ねむい(プロフ) - minatoさん» そのように感じていただきとてもうれしいです；；お読みいただきありがとうございました。細かい点まで読んでいただき、嬉しい限りです。これからもどうぞよろしくお願い致します。 (2017年12月26日 14時) (
レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
minato(プロフ) - コメ失礼します。お話、すごく良かったです...!ねむいさんの表現や、情景描写がすごく綺麗でせないずの精巧な美しさというか繊細な美しさ的なもの(語彙力不足)と表現によって引き出された情景や登場人物の美しさに感動しました。一言でいうと好きです((お疲れ様でした! (2017年12月26日 14時) (レス) id: 049240713a (このIDを非表示/違反報告)
ねむい(プロフ) - しみ猫さん» とても嬉しいコメントありがとうございます、そのように感じていただけて嬉しい限りです。お読みいただきありがとうございました！ (2017年12月13日 23時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
しみ猫(プロフ) - 感動しました、夢主の天才だけど、とても人間らしくて、読むのがとても楽しかったです、すばらしい作品をありがとうございました。 (2017年12月13日 23時) (レス) id: 48eca2380d (このIDを非表示/違反報告)
ねむい(プロフ) - イチゴプリンさん» ありがとうございます〜！いえいえ、拙い文章ですが楽しんでいただけたのなら幸いです；； (2017年12月10日 23時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ねむい | 作者ホームページ：
作成日時：2017年12月6日 18時
