プット・オン・バランス/1 ページ29
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腰に手を回してみると思っていたよりも細かったから、これ私よりも細いんじゃないかと一度離して、バイクから落ちそうになった。
中也とバイク二人乗りだなんて久しぶりだなあともう一度手を回すと、ごつごつとした筋肉が手に中る。鍛えてるんだな、いや、当り前か。今じゃポートマフィアきっての体術使いだなんて呼ばれているものだから、肌寒いったらありゃしない。
________と、先程からどうもやりづらいのだが。その原因は中也にある。なんだか苛つかせてしまったようで、怒りを孕んだ横顔なんて恐ろしくて見られるはずもない。どうしたものか。
「 中也ー…? 」
「 あァ? 」
「 な、何でもない 」
待って、どうして、わけを教えて!このままやりにくい感じで組織に戻るのもやだし、かといってこの人を苛つかせる一方の私に解決できる問題じゃない気もする!そうだ、何か面白い話…
「 あっ、ああ!あ!昔太宰がさぁ!豆腐を!豆腐の角に頭をぶつけて死ぬっていう… 」
「 …太宰ィ? 」
「 … 」
________地雷ィ。忽ち口を噤んで下を向くとアスファルトがものすごい勢いで流れていった。…なんて、思うと同時に急ブレーキがかかる。
「 うえっ 」
「 … 」
体が前に倒れて、中也の硬い背中に頭を強打。この世の凡てのことに法則性はあるのに、この上司の機嫌には法則性はないのだ。あぁ、矛盾しているとぶつけたところを摩る。あの豆腐と同じくらい硬くて吃驚だ。
「 …おい、A 」
「 …え 」
「 ほら、着いたぞ 」
急ブレーキの時に気付いていればよかったのだが、いつの間にやら拠点に着いていたようだ。運転が荒…じゃなくてとってもうまい中也のおかげで目的地まで所要時間の半分もあれば着くというわけか。
さっさと降りていく上司の背中を5歩ほど開けて歩いた。地下駐車場にこつこつと態と踵を響かせて歩くと光が点滅する。不気味だなあ、もっと電飾キラキラにすればいいのに。
と、足元にこびりついた血の跡を見詰めて、そう思った。
________あぁ、今日も転職先を考える暇なんて無かった。
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ねむい(プロフ) - イチゴプリンさん» いつもありがとうございます、本当に励みになります、、!これからも何卒宜しくお願い申し上げます! (2018年4月2日 12時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
イチゴプリン(プロフ) - ねむいさんの作る作品はとっても面白くて大好きです!これからも更新頑張ってください!応援してます! (2018年4月1日 13時) (レス) id: 645f74247e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねむい | 作者ホームページ:
作成日時:2018年3月27日 16時