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甘さと苦さの隙間/6 ページ28




「 A 」

太宰の飲む珈琲の上でミルクと黒い液体がワルツを踊り始めた頃、不意に優しい声がした。それはどうやら先ほど厳しい話題を投げかけてきた此奴から発せられているようで、全く何て皮肉な奴だと顔を上げてみると何だか見たことのないような顔をしていた。

それは、本当に、優しさ なんてものを含んでいたのだ。真っ黒だった時代の彼奴が見せることのないような表情、少しだけ悔しくなるほどに綺麗な笑みだったんだ。


「 取り乱すな 」

「 え? 」

「 ほら、 」


ぐい、と身を乗り出して太宰は顔を近づけてきた。仰け反ろうにも頭をその大きな手で固定されているのだから無駄な抵抗か、と目を閉じた。何たって、仮にも公共の場でそんなこと___


「 ______“ 君の上司 ”が、監視している 」

「 …っ、 」

「 なぁに?もしかして期待してでもいたのかい?せっぷ… 」

「 してない 」


睨みを利かせて引き剥がす。馬鹿みたいだ、こんなの。目を閉じたのは自己防衛の為だ。勘違いするな、自惚れるな、この色男め。


「 ほら、取り乱すあたり君は未だ未熟だよ 」

「 うわ腹立つ 」

「 へえ、そんなこと云っちゃっていいのかい? 」


やばい___そう感じると同時に手を強く握られた。ひい怖い、何コイツ。優しいとか思ってた3分前の自分を殴りに行きたい。ぴくぴくと頬が痙攣するように動いた。指が絡められる。ヒッ、全身を絞られたかのような声が出る。足音がする。離されない。やばい。やばい。引き寄せられる。やばい。


______「 おい手前。此奴に手出すたァ、いい度胸してんじゃねぇか 」


「 …あーあ。やっぱり来たよ蛞蝓。酷いなぁ、昔から私はAのことが大好きなのに! 」

「 その大好きな私のことを昔君は何回殴ったんだろう、酷いなあ、親父にも殴られたことなかったのに! 」

「 親父はいないって言い張ってたのは何処の何奴だよ 」


ぱっ、指を広げて睫毛を伏せた太宰はいかにも落ち込んだというような顔を作ってみせた。


「 まず第一に、Aは君の女でもないじゃあないか 」

「 そう!私を支配するのは私自身だけ!はーっはっは! 」

「 だからこんなちんちくりんに手出すたァ呆れた趣味してやがるって警告だよ 」

「 …ゑ? 」


帰るぞ、と腕を掴まれた。私はお前の言葉イマイチ理解できてないぞ!ちんちくりんってなんだちんちくりんって!半ば引きずられるようにして太宰が遠ざかる。ちんちくりんって!


「 Aー、面倒臭い上司を持つと大変だねぇ 」

「 あんたが一番面倒臭かったよ太宰 」


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ねむい(プロフ) - イチゴプリンさん» いつもありがとうございます、本当に励みになります、、!これからも何卒宜しくお願い申し上げます! (2018年4月2日 12時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
イチゴプリン(プロフ) - ねむいさんの作る作品はとっても面白くて大好きです!これからも更新頑張ってください!応援してます! (2018年4月1日 13時) (レス) id: 645f74247e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ねむい | 作者ホームページ:   
作成日時:2018年3月27日 16時

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