幕が上がり、誰一人居ない/2 ページ21
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「 お互い、喧嘩っ早い部下を持ったものだねぇ 」
「 いやそもそも私の部下じゃないし、太宰の教育が悪かったんでしょ 」
現場と思われるところの近くまで来ると大きな破壊音が聞こえた。これでは目立ってしまうじゃあないか。
「 ……早く行ってよ太宰 」
正直面倒臭い。あの時太宰が“ 芥川くんの教育が面倒臭さい ”と言っていたが、やっと気持ちがわかった。独断で迷惑をかけるなんて何様の心算だ。後で何か奢ってもらおうと思う。
そして、太宰に借りを作ってしまった。これもまた面倒臭い。見返りを求めないのが正義なのでは?と思うが、彼奴は未だ完全な正義に染まっていないらしい。
「 はーい、そこまで 」
キザな声が裏路地に響き渡る。ちらりと覗き込めば死体がゴロゴロと転がっていて、また派手にやらかしたなあなんて、心底呆れた。此処までしてしまっては可哀想じゃあないか?然も事務方の子達だ。戦闘向きではない異能力を持った人と、異能力が皆無の子。ううん、こんなの勝ち目がない。
けれど、一つだけ驚いた事は、敦君が異能力をまあまあ使いこなせるようになっていたことだ。
やはり“ ふくざわどの ”か。厄介な異能力である。見た所太宰がポート・マフィア時代の教育をした訳では無さそうだし。
もし、“ ふくざわどの ”の下についたのなら、私も制御できるようになるのだろうか。そして、精神的に成長することができたのだろうか。謀反ではないが、何度か思ったことがある。
____そういう気持ちに疎い上司に比べ、彼奴は完全に思考を読み取ったようで薄ら寒い笑みを浮かべて此方を見つめていた。
「 正義とは唯の独壇場だ 」
云ってやった、そう、云ってやった。正義とは唯の自己満足ではないのか。誰か一人の為に用意された独壇場ではないのか?
「 何故悪は淘汰される?例えそれが無垢な気持ちからであっても、全ての悪と纏めあげられる? 」
だって、そうだろう。______君の唯一無二の親友だって。人ひとり殺さなかったのに、最後は悪と共に消えていった。彼の人の生き方は正義とも言えず、悪とも言えなかった。
「 何故か解らない、教えてくれよ太宰 」
「 _____歪んだ思考を持つべきではない。
誰かが言ったのだ、悪は所詮悪なのだと。
それならば、此奴は如何なる?
昔、マフィアに入った時からずっと、此奴____太宰治の黒さが、暗さが、
私にとっての正義であった。
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ねむい(プロフ) - イチゴプリンさん» いつもありがとうございます、本当に励みになります、、!これからも何卒宜しくお願い申し上げます! (2018年4月2日 12時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
イチゴプリン(プロフ) - ねむいさんの作る作品はとっても面白くて大好きです!これからも更新頑張ってください!応援してます! (2018年4月1日 13時) (レス) id: 645f74247e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねむい | 作者ホームページ:
作成日時:2018年3月27日 16時