24 ページ24
，
「 お誕生日おめでとう 」
「 ……え？ 」
「 だから、お誕生日おめでとう。さよならだよ 」
「 …ちょっと、まっ…！ 」
待たないよ。君も待ってくれなかったからさ。
時間も君も、全員私を置いていってしまったね。
手を掴みたかったけど、それさえさせてくれなかったね。
泣きそうになっちゃうから、もう行きたいな。
プレゼントは用意したけれど、学生がするプレゼントではないかもしれない。でもさ、君は私以外の人間全員に恋してる。君は人間じゃなくて、だから人が恋しいのかなって最近思い始めた。
「 ほら、プレゼント 」
「 えー、買ってくれたんだぁ 」
「 ん、だってさよならしたいからさ 」
「 ……さよなら？ 」
君がしたくないって思ってるなら嬉しいな。
すっとぼけた顔をした君は何かを理解したかのようにプレゼントの過剰包装をときはじめた。
がさがさという小さな音の後で、少しだけ風が吹き始めて、君は地面にかがんでしまった。
授業をサボって暇になってしまった二人は学校から少しだけ離れたところにいた。海だ。
いや、海と陸の隙間、アスファルトが垣間見えて、君はその冷えた陸にかがんで、小さく震えていた。
「 泣いてるの？ 」
「 ……泣いてないよ 」
「 近くのところだから８００円くらいだよ、本当に効くのかどうか分からないけどさ 」
「 ……ばぁか、値段なんて言わなくていいってば、さよならしたら俺はあんたにプレゼントなんて選ばせてもらえないんでしょ 」
「 凛月 」
「 てかあんた誕生日いつなの、聞いてなかったよ 」
「 さよなら 」
．
．
このまま一緒にいたら私だけじゃなくて君にも嫌な思いさせちゃうかなって思っただけだ。だからちょっと大人になって、私の方からさよならしてやろうと思って。世界で一番辛くて悲しい恋は片隅に追いやられて誰にも見てもらえない底に沈んでいく。特番でも組んでもらわなきゃ見つからないくらいにもう自分もわからないどこかに行ってしまった。
「 ほんと、好きだったよ 」
「 嘘だあ 」
「 嘘じゃないってば、でももう効かないよなあこれ 」
「 どうだかね 」
「 …うん、でも嬉しいよ、ありがとう 」
「 お誕生日おめでとう、それから 」
おやすみなさい。
恋愛成就！
その文字はピンクの糸で小さな袋に刻まれていて、同時に私の海馬にも縫い付けられた。
朔間凛月くん。
その日はね、_____
，
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 43人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「あんスタ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
フラッペ - ねむいさん» りっちゃんはいいですよね（＾＾）独特な雰囲気というか無気力で可愛らしいというか……でもライブではきちんとする所、好きです。更新の方は細かく繊細に書かれているのがねむいさんの作品の良いところですので、自分の思うがままに書いていただければ幸いです……♪ (2018年8月22日 1時) (
レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
ねむい(プロフ) - フラッペさん» ありがとうございます。フラッペさまからコメントをいただくたび、有難いという気持ちで胸がいっぱいになります。お気付きかとは思いますが、私も朔間凛月が一番の推しです。しかし推しほど書くのが難しい！精一杯尽くしていきたいと思いますのでよろしくお願いします！ (2018年8月20日 10時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
フラッペ - 新作おめでとうございます（＾＾）推しのりっちゃんなのでとても嬉しいです……!!もう一話目で「好き」と口からポロりと出てしまいました。ホントにこの作品の続きがむちゃくちゃ気になります。ねむいさんの事応援してます♪ (2018年8月18日 21時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ねむい | 作者ホームページ：
作成日時：2018年8月15日 23時
