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お祝儀こそ勘付いたセッちゃんが代わりに出してくれていたのだが、あとでこっぴどく怒られるのは最早逃れようもない。溜息をつくと脳裏に先ほどの女が浮かび上がってくるものだから勢いよく首を横に振って靄を払う。
_____またね、朔間くん。
またね、なんて言うのならばまず正体を明かしてほしい。覚えてないならということは前にあったことがあるのかもしれないが、あのような美人なら忘れもしない。
そこで、一つの可能性が浮かび上がった。もしかして、_____兄者と間違えられているのではないか。そうであればとても屈辱的だ。女が去っていった方向、ちょうど結婚式場の入り口とは反対側を睨みつけていると、唐突に足音が聞こえて、そこで嗅ぎ慣れた匂いがして、隣でぎしっとベンチが軋む音が聞こえた。
「 …なーにぼーっとしてんのさ、くまくん 」
「 ん〜、セッちゃんかあ… 」
「 あんたさあ、これで諦めはついたわけ？ 」
．
．
「 …うん、もうとっくに、諦めてるよ 」
恋なんて、それ以来していない。
思えば初恋で、初めてした恋で、初めて諦められなくて、初めて終わらせたくないと思った。
来てくれて嬉しいよと、あの子は白い手で、ベールをつけた頭で、純白のドレスで、全身で、今日を迎えられた嬉しさを表現した。心臓がぎりぎりと締め付けられる感じがした。
「 ごめん、セッちゃん、俺、 」
「_____逃げるの？ 」
「 …え 」
「 なんでもないよ、…急用ができたんでしょ？ 」
「 …うん、そう伝えといて 」
_____恋なんて、それ以来していない。
好きだって、それ以来感じない。無知で無知で、極まりがなくて、コンビニでお祝儀袋を買った。蝶々結びがプリントされていた。
「 …何度も繰り返していいだなんて、思ってないから 」
許して。どうか、お願い。
“ 結び切り ”であったはずのその袋の中身と、それから長財布から出したお札を何枚かセッちゃんに渡した。セッちゃんが小さく頷いてまた彼の居場所に戻っていくのを確認してから、空車のタクシーに乗り込んだ。運転手は何も知らないくせに、もういいのかだなんて俺に問う。
「 いいんです、これで 」
あの女の言葉を思い出していた。タクシー特有の匂いの中で、ゆらゆらと脳内を揺れていた言葉。気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い。胸糞が悪い、気持ち悪い。車の揺れも手伝ってさっき自棄になって胃の中に詰めたものが溢れ出て来そうなほどに。
無責任にはなれないよね。
何を知ってるの、ねえ。俺の、何を知ってるの。あんたは、誰。
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フラッペ - ねむいさん» りっちゃんはいいですよね（＾＾）独特な雰囲気というか無気力で可愛らしいというか……でもライブではきちんとする所、好きです。更新の方は細かく繊細に書かれているのがねむいさんの作品の良いところですので、自分の思うがままに書いていただければ幸いです……♪ (2018年8月22日 1時) (
レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
ねむい(プロフ) - フラッペさん» ありがとうございます。フラッペさまからコメントをいただくたび、有難いという気持ちで胸がいっぱいになります。お気付きかとは思いますが、私も朔間凛月が一番の推しです。しかし推しほど書くのが難しい！精一杯尽くしていきたいと思いますのでよろしくお願いします！ (2018年8月20日 10時) (レス) id: f7d54c694c (このIDを非表示/違反報告)
フラッペ - 新作おめでとうございます（＾＾）推しのりっちゃんなのでとても嬉しいです……!!もう一話目で「好き」と口からポロりと出てしまいました。ホントにこの作品の続きがむちゃくちゃ気になります。ねむいさんの事応援してます♪ (2018年8月18日 21時) (レス) id: 0c5a8c4f79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ねむい | 作者ホームページ：
作成日時：2018年8月15日 23時
