反動(嘔吐表現あり) ページ29
食後。
「悟さん、お風呂ですか？」
「ん、まあね。」
悟さんは瓶から薬を取り出して、水と一緒に私の前に置いた。テレビに夢中になるフリをして、彼が部屋を出るのを待つ。どうにかこの薬を飲まないで済む手口を探った。
私の中で、薬が危ないのではと勝手に勘ぐっている。
硝子さんの手紙から察するに、これには人体に何らかの影響を与えるような、強力な何かがあるのかもしれない…と疑えて仕方がなかった。
彼は、テーブルの前で立ったまま動かない。
私を監視している。
…怪しまれてもダメだ。
私はチラリと薬を見て、ゆっくりと手を伸ばしながら再びテレビを観た。
「…お風呂、入らないですか？」と言って水を一口飲む。
「えっ、ああ。ちゃんと飲めるかなと思って。」
「飲めますよ、子供じゃないんですから。」
「じゃあ飲んで。」
「……お風呂冷めちゃいますよ。」
「冷めちゃう前に飲んでよ。」
「見られてると飲みにくいんですよね。」
「じゃあ飲ませてあげる。」
と、聞こえた瞬間に、薬を一気に流し込んだ。
急いでしまったものだから、喉に引っかかって咳を繰り返す。
「ごめんごめん、からかい過ぎたね。」
そう笑った悟さんは背後に回ると、私の背中を大きな手でさすった。
「もういいですよ、お風呂。お風呂行ってください。」
「はいはい、行ってくるよ」
今度は頭に手をポンポンと置くと、「じゃあ後でね」と言って彼は部屋出ていった。
足音が遠のいて行くのを聞き、私は席を離れる。
壁を伝い、忍び足でドアに近付いて、聞き耳を立てた。
悟さんが着替えを取りに行った足音。
その後、脱衣所へ向かう足音。
それらに神経を集中させ、脱衣所が閉まったような音が聞こえた時、ゆっくりとドアを開いた。顔を覗かせて、廊下を見渡す。やはり、彼はもうお風呂へ入ったようだ。
今だ。
急いでトイレに入り、荒々しく鍵を閉めて便座を上げた。
そして、指を喉に突っ込むと、無作為に掻き回した。
「うっ、おぅっ、え」
胃の底から押し返すような反動が頭まで響いた。嗚咽を何拍か繰り返し、肺が押し潰れたように、刻々と息苦しくなってゆく。次第に、涙が滲んできた。
中指と薬指が届く所まで、限界まで突っ込んだ。指の付け根に前歯が当って痛いけれど、気にしてはいられない。
「オエェッ……」
胃からせり上がって来るものを、勢いに任せて口から出した。全身に力が入り、手足が痙攣すると、自然と溢れた涙がボロボロと頬を伝う。
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松野星月(プロフ) - コメ失礼します！わー、心に来る。続きがますます気になりました！楽しみに待ってます！ (5月4日 16時) (
レス) @page37 id: 7e5eb61c5c (このIDを非表示/違反報告)
ナミ - コメント失礼します！すごく面白かったです！質問なのですが,この作品は完結でいいのですか？内容的に途中だと思うのですが…もし,続きを書く予定があるのなら続きみたいです！更新頑張ってください(^^) (2023年3月21日 14時) (レス) id: cbde72f558 (このIDを非表示/違反報告)
のんのんた(プロフ) - 一般タコピーさん» 返信遅れてごめんなさい！コメントありがとうございますっっ！！身に余るお言葉ですがめっっっちゃくちゃ嬉しいです(/Д`;💕︎ 不定期になってしまいますが、更新頑張ります！- ̗̀( ˶^ᵕ'˶)b (2022年12月19日 13時) (レス) id: a4f760f5fa (このIDを非表示/違反報告)
一般タコピー - 神作品だ！作者様の文才が素晴らしくて一気に読んでしまいました！更新頑張ってください！ (2022年12月15日 18時) (レス) id: e79aa4edc0 (このIDを非表示/違反報告)
のんのんた(プロフ) - あさん» 嬉しいです！！ありがとうございます！私も好きです！！！(唐突) (2022年12月13日 17時) (レス) @page36 id: a4f760f5fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：のんのんた | 作成日時：2021年10月4日 4時
