狼狽える -視点なし- ページ19
「で？ 嫁とやらはどうなんだ？」
家入は何気ない様子で、五条に問うた。
この呪術高専では、教師や生徒含め、五条の配偶者に対して追求しない。主に彼が担任を受け持つ女子生徒、釘崎ならば真っ先に首を突っ込む案件だ。だが、誰一人としてチラリとも話題を産まないのだ。家入は、自分にだけにしか伝えていない、内密的な話なのだと自然と捉えた。
「どうって、毎日ラブラブだよ。」と、五条はいつものように陽気に返す。
「それなら良いんだがな…。五条、あの薬を飲むほどの不眠なら、定期検診が必要だぞ。」
本題はここだった。
五条が持ち出した睡眠薬について、家入は飲まされた者が本当に�牴猫瓩覆蕕弌�体の調子が気がかりだった。五条は高専時からの友人であり、彼の苦難は理解している。ゆえの、結婚。やっと掴み取った幸せ。
薬一つで万が一のことがあっては、ならないと思った。
「私の所で診察するのはどうだ？」
「んー、気持ちはスンゴク有り難いんだけどさ。」
「…何だ。」
「誰にも触らせたくないんだよね。」
思わぬ依存ぶりに、家入はうろたえた。
固着だの執着だの、そんなものとは無縁だと思っていた軽薄な男が、どっぷりと溺れているのだ。
「…五条、お前。」
「ま、気にしないでよ。タイミングみて薬は止めるからさ。」
「まだ飲ませ続けるのか？ なら尚更、私の所に連れて…」
「祥子。」と五条は被す。
「僕さ、もうダメなんだよね。誰かに触られるの見るとさ、無理、ホントに。無理なんだよ。自分がグチャグチャになりそうでさ。」
胸の奥に秘めていたドロドロとした感情を押し留めるような、震えた声が静かに響く。
家入は、何も言葉が出なかった。
何が彼をそこまで、させているのか。過去に一体何があったのか。嫁とやらは何者なのか。
言いたいことが次々と頭を過ぎったが、敢えて口には出さなかった。何より、自分の命を案じた。今の彼では、誰でも容赦しないと安易に感じ取れた。
「もういい？」
「あ、ああ。悪かったな。」
打つ手はない。
･･･
伊地知は固唾を飲んだ。
ここ数日間、五条の機嫌が異様に良かった。
現地まで迎えに行った伊地知へと、毎回手土産を持ってくるほどに。それはそれで怖いと思っていたけれど、機嫌が異様に悪い地獄モードよりはマシだと思っていた。
家入の元から帰ってきてから、数日ぶりにその地獄モードは訪れた。
まず、車から乗り込んでの第一声が舌打ちだったのだ。
伊地知は涙目で車を発進させた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 868人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
松野星月(プロフ) - コメ失礼します！わー、心に来る。続きがますます気になりました！楽しみに待ってます！ (5月4日 16時) (
レス) @page37 id: 7e5eb61c5c (このIDを非表示/違反報告)
ナミ - コメント失礼します！すごく面白かったです！質問なのですが,この作品は完結でいいのですか？内容的に途中だと思うのですが…もし,続きを書く予定があるのなら続きみたいです！更新頑張ってください(^^) (2023年3月21日 14時) (レス) id: cbde72f558 (このIDを非表示/違反報告)
のんのんた(プロフ) - 一般タコピーさん» 返信遅れてごめんなさい！コメントありがとうございますっっ！！身に余るお言葉ですがめっっっちゃくちゃ嬉しいです(/Д`;💕︎ 不定期になってしまいますが、更新頑張ります！- ̗̀( ˶^ᵕ'˶)b (2022年12月19日 13時) (レス) id: a4f760f5fa (このIDを非表示/違反報告)
一般タコピー - 神作品だ！作者様の文才が素晴らしくて一気に読んでしまいました！更新頑張ってください！ (2022年12月15日 18時) (レス) id: e79aa4edc0 (このIDを非表示/違反報告)
のんのんた(プロフ) - あさん» 嬉しいです！！ありがとうございます！私も好きです！！！(唐突) (2022年12月13日 17時) (レス) @page36 id: a4f760f5fa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：のんのんた | 作成日時：2021年10月4日 4時
