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Noside
ほのかに香るのは鉄臭い血液
見るも耐えない傷だらけの身体をぞんざいにベッドの上に捨てられてからは、一つも動いていない。
父親だったものに抱かれて、兄に傷付けられて、何時間経ったか分からない。
Aはもう何もかもがどうでも良くなっていた。
身体中と頭が痛い、うるさい、もう静かにしてくれ。
Aは自慢の五感を働かせること無く眠りについた。次に起こされるのはいつだろう、このまま目覚めなければ良い。もう起こさないで欲しい。
そんな事を思いながら。
ーーーーーーー
「…A？」
A……？…そうだ、俺の名前だ。まだ、生きてる……？
薄ぼんやりとした視界の中で、俺は自分の五感を無意識にセーブしていた事に気が付いた。
そりゃあそうだ、だってよく見える目のせいで父の欲にまみれた視線が、兄の光悦とした顔が。
よく聞こえる耳のせいで父の荒い息遣いが、兄の楽しそうな声が。
よく香る鼻のせいで父の白濁とした液の臭い、兄が原因の血の臭い。
全部全部不愉快だった。
早く死んでしまいたかった。
でも、それでも俺の鼻が、耳が拾ったその感覚は、俺が恐れて嫌ってならないそれとは違う。
「あ、死んでなかった」
「……」
何でお前がここに、という言葉は音として目の前の男に届かなかった。どうしてなのかは分かる。声が出なかった。
声が出なくなることはこの家では良くある事だからそれ自体には驚きはしなかったけど、
目の前の男はそういう訳にもいかないらしく。
「起きてる？」
「…………」
「なんか言いなよ」
「っ、」
「もしかして声出ないの？あ、出さないの？」
「！！」
「嘘、冗談だよ。」
愉快そうな目の前の男は、……イルミは俺の頭を撫でた。そんな事するタイプじゃないだろ、何で今に限って、なんで、
なんでここに、
そう思えば思うほど涙が出てきて止まらなかった。
そんな俺を揶揄うことも咎める事もしなかったイルミは黙って俺の頬を撫でた。
「まぁ生きてるならいいや」
「…………」
「何か調子狂うなぁ、泣き止んでくれる？」
無茶苦茶言うな。
殺し屋のイルミが目の前にいる。
助けに来たのかも殺しに来たのかも分からないけど、父親でも兄でもない存在が、俺にとってどれだけ助けになる存在か。
依然として流れる涙を止められない俺に、イルミは呆れたように溜息をついて
そのまま俺を抱き上げた。
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ヴィンセント・ヴァンクール - とっても面白かったです！面白すぎて一気に読んでしまいました！！続き楽しみにお待ちしております╰(*´︶`*)╯♡ (11月17日 16時) (
レス) @page21 id: 0ffcd0578b (このIDを非表示/違反報告)
とらじ - 私の性癖にブッ刺さりまして…一気に読ませてもらいました！作者様のペースでいいので、続きをお待ちしております！ (2022年9月22日 20時) (レス) @page21 id: c8f94ad8bd (このIDを非表示/違反報告)
パンツ - じゅじゅき無くて泣きそうあああああああああああ (2022年7月17日 11時) (レス) @page21 id: 804c35253a (このIDを非表示/違反報告)
雪マカロン(プロフ) - 凄く面白いです！更新頑張ってください！ (2022年5月5日 6時) (レス) @page20 id: c9091179e7 (このIDを非表示/違反報告)
リト - 待っていました！思っていたより最高のお話で、良かったです！これからも応援してます♪ (2022年4月4日 22時) (レス) @page18 id: 2df230b8f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：山菜 | 作成日時：2022年3月8日 5時
