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「知り合いから神崎さんが
大学で看護教員として働き始めたって聞いて。」
笑い過ぎたのか目に涙を溜めて
それを人差し指で拭う宮舘先生に拗ねて見せると
ようやく落ち着いたのか再び話し始めた。
「勿論、あの日のトラウマが医療から遠ざかった一番の理由だけど
神崎さんが辞めたって聞いた時
俺だけ戻っていいのかって…上手く言えないけど
そんな思いが根本にあったんだよ。」
宮舘先生が打ち明けた胸の内は
私が抱えていたモヤと全く同じもので
心臓の音がまたどんどん大きくなっていく。
「神崎さんがまた医療に携わることを決めたんだって知って
すごく嬉しくて、俺もこのままじゃ駄目だって
背中を押してもらったんだよ。」
「私は、ただ師長に助けられただけで」
「でも話を持ち掛けられただけで
看護教員として働くと決めたのは神崎さんでしょ？」
すっかり日も暮れてしまって
数本の街灯だけが公園内を照らしている。
宮舘先生が今、どんな表情を浮かべているのかは分からないけれど
見つめていた足元が滲んできて、鼻を啜った。
「小児科医師の深刻な人手不足は
俺が医者を辞める前からさんざん言われてきた。
求められる医療の領域が幅広くて、負担がかなり大きいから。」
「…はい。」
「俺は少ないけど経験があるし
自分を必要としている子供は沢山いるんじゃないかって
神崎さんが働き始めたって聞いてすぐ
ここで俺も医者としての仕事を再開したんだ。」
横目でチラリと見た宮舘先生は
キラキラとした瞳で近況を話していた。
その姿は、一緒に働いていた時と全く同じで
きっかけは私だったとしても
私より何倍も、彼は前に進んでいるんだと悟った。
「俺一人が復帰したところで
人手不足は変わらないし、助けられない命もあるよ。
それでも自分にできることは全力でしたいし
一人でも多く子供の笑顔を守りたいんだ。」
「宮舘先生も、昔と変わらないですね。」
「そう？」
「目の前の命と懸命に向き合う姿とか
この仕事が大好きなんだろうなって伝わってくる雰囲気とか。」
私がそう言うと
宮舘先生は照れたように頭を掻いた。
結局、立ち止まったままなのは私だけで
何かと言い訳をしてあの日から抜け出そうとしていなかった。
うじうじしている自分に腹が立つと同時に
宮舘先生の笑顔で、ずっとモヤが掛かっていた胸の内が
晴れ渡っていくような気がした。
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読者A(プロフ) - いつも ぱくたろうさんのお話を読ませていただいていたのですが私事で久しく占ツクを開けていないうちに新作を作られて完結されていたので2日で一気読みさせて頂きましたが、、、安定にボロボロ泣きました…今回も素敵な作品をありがとうございました。 (2023年1月16日 14時) (
レス) @page39 id: c0ba04e557 (このIDを非表示/違反報告)
ぱぐたろう(プロフ) - 青こなこさん» 最後までありがとうございました！お返事遅くなりすいません。共感していただけて嬉しいです！こちらこそありがとうございました🙇♀️ (2022年12月27日 20時) (レス) id: 7ae9714678 (このIDを非表示/違反報告)
青こなこ(プロフ) - 完結おめでとうございます。ぱぐたろうさんの作品、いつも楽しく読ませて頂いています！私も医療系に携わっていることもあり、患者さんとの関わり方や葛藤など、共感するところが多かったです。素敵な作品をありがとうございました！ (2022年11月30日 22時) (レス) @page39 id: e1d2c6feb7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぱぐたろう
| 作成日時：2022年10月21日 19時
