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「あの、」
「なんだい？」
「こんな高い物…申し訳ないです。」
「気にしないで、お礼だから。」
予想しなかったおじいさんのお願い事に
腰を抜かししゃがみ込むと
急に死ぬのが怖くなって家へ帰ることにした。
帰り際に交換した電話番号でおじいさんと連絡を取り
待ち合わせ場所に向かうと高そうなお店に沢山連れていかれて
凄い量のブランドものを買い占めると
プレゼントだと私に差し出してきた。
「付き合うって…その、」
「私はもう先が短いから
最後の思い出に若い子と付き合ってみたくて
ああ、妻とは死別してるから不倫じゃないよ。」
「は、はぁ…」
「まあ人助けだと思って、ね？」
どうせまた落ち着いたら死ぬんだし
最後ぐらい人のためになってからこの世を去ろう。
そう思っておじいさんに小さく頷くと
また柔らかい笑顔を見せてた。
「今日はお散歩に行こうか。」
「近くにいい感じの雑貨屋さんができてね。」
「水族館とかどうだい？」
おじいさん…正人さんは毎日の様に私をデートに誘ってきた、
でも手を繋ぐだとかキスやハグ、それ以上の事は求めてこなくて
何処かにお出かけしてカフェでお茶して帰る
それがデートのルーティンだった。
「楽しかった？
若い子の好みはわからなくて。」
「すっごく楽しかったです！
いつも素敵なところへ連れて行ってくれて
ありがとうございます！」
「やっと可愛らしい笑顔になってきたね。」
いつも通りカフェでお茶しながら
今日の感想を言い合っているとそんなことを言われて
首を傾げると正人さんは鼻を指で触りながら笑った。
「君の笑顔は、なんというか…
油をささないといけないレベルだったから。」
「ぎこちないってことですか？」
「はは、まあそうかな。」
最初は、男の人って歳を重ねても
結局若い女が好きなんだなって呆れてた。
でも正人さんのその言葉を聞いて
この人は私が死んでしまわないように
そばで見守ってくれていたんだと気づいた。
「若い子には幸せになってほしい、
うちの孫も笑顔が苦手というか
任侠顔で怖いんだよね。」
「なんですかそれ。」
正人さんは二年がかりで私を笑顔にしてくれて
もう死にたいなんてこれっぽっちも思わなくなった。
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ぴくみん(プロフ) - ぱぐたろさんの作品の一つ一つ伏線を回収していくお話が本当に好きで、今回もワクワクしながら読んでいたらあっという間にエンディングでした！今回の作品もとても面白かったです…いわふかの関係性が最高でした。 (2021年6月28日 3時) (
レス) id: 3b567ca5ed (このIDを非表示/違反報告)
みー - 他にはないジャンル？のお話で、一気読みしました！すごくおもしろかったです！ (2021年6月27日 23時) (レス) id: 978894b8a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぱぐたろう
| 作成日時：2021年6月27日 20時
