ハローエフェクト前編 (ページ5)

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「佐久間のせいで踏んだり蹴ったりなんだけど。」

「悪いと思ってるからこうやって飯奢ってるんじゃん！
　もう許してよ～。」

何とかあの状況を切り抜けて
ずいぶん長く感じた午前の就業時間が終わり
社内にある食堂で阿部ちゃんと昼食を食べることになった。

「お疲れ様。」

「ひっ。」

「何その反応、仕事増やされたい？」

さっきの一件で完全に悪印象を持たれてしまい
初日から半端ない仕事内容を覚えさせられた。
そのおかげで俺は早見さんに鬼のイメージを持ってしまい
隣に座って声をかけてきた彼女に対して悲鳴をあげてしまった。

「さすがに覚えさせるスピード早かったよね
　ごめん、でもできるだけ早く覚えてほしい。」

「岩本さんと渡辺さんって何かあるんですか？」

「…あんた、変わってるねって言われない？」

「はい！よく言われます！」

早見さんは溜息をついてラーメンをすすり
俺と阿部ちゃんも手を合わせたあと食べ始めた。

「Aちゃん…あ、岩本さんの事ね？
　あの子が耳に障がいあるの知ってる？」

「さっき舘さんから聞きました！」

「そう、じゃあ話は早いか。
　まあだから仕事とかみんなでフォローしてるの、
　連絡はもちろん必ずメモで
　会話で使う手話だけ覚えて使ってる社員もいたりして。」

一丸となってサポートしているようだ。
俺も仕事覚えたらお手伝いできたらいいな
そしたら毎日あの可愛い顔が近くで拝めるわけで
しかも仲良くなれるチャンスでもある。

「…そんな下心満載で近づかないで。」

「なんで！？」

「漏れてる、心の声が！」

軽く頭を叩かれて大袈裟に痛がると
早見さんはまた溜息をついて水を飲み干した。
箸をいったんトレイの上に置くと
眉間に皺を寄せて腕を組んだ。

「渡辺はそう言う事一切しないの、
　紙に書かないで全部口頭で伝えるし手話も使わない
　手伝ってるところだって見たことないし！」

「たまにいますよね、理解のない人って。」

思い出すだけでむかつくようで
どんどん口調が荒くなっていく早見さん。
それを聞いた阿部ちゃんも怒り顔で相槌を打ち
口いっぱいにカツを頬張った。