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「で、話を戻すと佐久間はそれが嫌なんだ。」
「えっ！？」
食堂で大きな声を出してしまい
ちらほらといた社員が一斉にこっちを見た。
渡辺さんもその一人で
様子に気が付いたAちゃんまで視線をこちらに向けた。
「声がでかいよ。」
「すいません…。」
みんなに軽く頭を下げると
阿部ちゃんの肩を掴んで顔を近づけた。
「いきなりそんなこと言うから！」
「だって事実じゃん、
最近ウザ絡みしてないし。」
「ウザ絡みって失礼な！」
できるだけ小声で話していると
阿部ちゃんは俺の体を突き放して
また呑気に昼食を食べ始めた。
「…渡辺さんの事好きなのかな〜。」
「さあね。」
「前にさ、渡辺さんの事聞いた時にさ
いい人だって言われたんだ。」
「岩本さんに？」
頷くと阿部ちゃんは眉間に皺を寄せて首を傾げる。
胸ポケットに入れていたメモ帳を取り出して
あの日使ったページを開き
Aちゃんが書いた文字を指でなぞった。
「俺はどう思われてるのかな…。」
またネガティブな気持ちが顔を出す。
ここでは嫌われたくない、そう思っていたけど
Aちゃんに対しては特にその気持ちが強かった。
「…、佐久間は自分を下げて見る癖があるけど
お前はいいやつだよ。」
「阿部ちゃん…、今日熱でもある？」
「その空気読めないところはたまに嫌いだけど。」
「酷い！」
嘘泣きをしてみせると
阿部ちゃんは笑いながら俺の背中を叩いた。
「やっといつもの佐久間の戻った。」
「…ありがとう。」
「俺はそういう佐久間も含めて好きだから
こうやって友達でいるんだよ。
だからもうこれ以上俺の大切な人の事をさ
そんな風に蔑まないでよ。」
ありがちな言葉だけどと付け足して
照れたように頭を掻く阿部ちゃんは眩しくて
そんな姿を見て少し心が軽くなった。
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作者名：ぱぐたろう
| 作成日時：2021年3月7日 18時
