ハローエフェクト前編 (ページ14)

今日:1 hit、昨日:42 hit、合計:201,923 hit

・ページ14

・

「えっと…。」

戸惑いながらもAちゃんを隠すように立ち
その男性を見上げていると
ゆっくりとこちらに近づいてきて息を飲んだ。

「もしかして佐久間さん？
　妹がいつも話してるから…いつもお世話になってます。
　兄の岩本照と申します。」

「え、あ、お兄さん！！」

本当に血縁関係があるのかと疑いたくなるぐらい
雰囲気が正反対のお兄さん。
Aちゃんは今この状況に気づいたようで
お兄さんを見て駆け寄って行った。

「いつも迎えに来てて、
　車の音とか聞こえなくて危ないから。」

「そうなんですね！」

「妹が佐久間さんによく助けてもらうって言ってて
　その、ありがとうございます。」

「とんでもないです！」

俺らの会話が気になるのか
Aちゃんはまたメモ帳に何かを書こうとする。
何故かお兄さんはそれを手で止めて
阿部ちゃんと2人首を傾げていると
両手で何やら不思議な動きをしだした。

「できるだけ手話使いなっていってるだろ？」

その動きは手話だったようで
さっきよりも優しい声でそう言いながら
Aちゃんに手話で伝えると俯き気味に小さく頷いた。

「…もしかして手話苦手？」

「おい。」

また心の声が出てしまって阿部ちゃんが止めに入ってくれた。
お兄さんは特に気にしている様子はなく
Aちゃんの頭に手を乗せて笑いながら頭を掻いた。

「そうなんです、
　やっぱり書くより手話の方が早いし
　もし書くものがない時に何かを伝えなきゃいけなくなったら
　困るのはAだから。」

「なるほど…。」

「練習がてら俺の前では手話にするようにしてるんです。
　…って話し込み過ぎましたね。」

時計を見ると15分ぐらい経っていて
電車の時間もあるしという事で解散することになった。

「あ、佐久間さん。」

「はい！」

「良かったら連絡先交換しませんか？
　会社での事教えてくれないから心配で、
　舘さんからたまに聞いたりはしてるんですけど。」

「ああ、よろこんで！」

お兄さんとも連絡先を交換して
Aちゃんたちは車に乗り帰って行った。