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「だから、ちゃんとメモしてあげてよ！」
「なんでそんなことしなきゃいけないんだよ！」
昼休憩が終わり早速4人で会議室へ向かう時
オフィスのみんなは俺を哀れみの目で見つめていた。
そして何となく予想はしていたけど
開始30分も経たないうちに二人の言い合いは始まった。
「あのね、あんたAちゃんの指導係やってたくせに
なんで彼女の障がいに理解を示せないわけ？！」
「はぁ？
何でもかんでもしてやることが理解なのかよ！」
早見さんと渡辺さんは
今にも手が出そうなぐらいにヒートアップしていて
Aちゃんは泣きそうな顔で交互に見つめている。
「大丈夫！怖くないよ！」
メモに書く前に言葉に出てしまって
早見さんと渡辺さんは言い合いを止めてこちらに視線を向けた。
そんな2人につられてかAちゃんも
ポカンと口を開けて俺を見つめている。
「言い合いはやめましょう、ね！
2人が言い合ってる姿はちゃんと見えてるんです、
そんなの見たら怖いに決まってます。」
耳が聞こえないからこそ
視覚からすべての情報を取り入れている彼女にとって
今の状況は凄く怖いことだと思う。
「大丈夫だよ！
ごめん怖かったよね。」
もう一度、今度はメモに書いて
それを見せながらAちゃんに声をかけると
眉は下がっているけど笑みを浮かべて頷いた。
「…ごめん。」
「…。」
2人とも冷静になってくれたみたいで
早見さんはAちゃんの隣に座り
手話で謝ると背中を擦っていた。
渡辺さんは、顔は怖いままだけど
それ以上は何も言うことはなかった。
「大丈夫そう？」
空気は若干悪いままだけど
何とか企画の大まかな内容を決めることは出来た。
会議室を覗きに来た舘さんは俺らの雰囲気を察して
俺の顔を見て苦笑いをした。
「だいたい何があったかはわかるんだけど…
仲良くしてもらわないと困るな。」
「別に仲は良くなくても仕事できます。」
「まあそうなんだけど…明日の午前は
佐久間と早見さんで営業行ってもらおうと思ってるから。」
「はぁ？！」
早見さんがそんな反応をするのも無理はない。
俺と早見さんが午前中いないという事はすなわち
渡辺さんとAちゃんの2人は会社に残って
この企画の続きを進めていくという事だから。
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作者名：ぱぐたろう
| 作成日時：2021年3月7日 18時
