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佰参拾捌 ページ10

異能と現実が混ざり合い、どこまでが実際の世界でどこからが未来予見なのか判らない、世界を超越した世界だった。


私達二人のほかには至ることのできない世界だった。
私達が殺し合わなければ至ることのできない世界だった。




『私は昔、小説家になりたかった。ある人に云われたんだ。そうすべきだと』


「小説家か」




ジイドは静止した世界の中で笑った。




「お前ならなれたかも知れないな」


『嗚呼』




そういう可能性の世界もあったかも知れない。




『ある人と話した。その人は小説をくれた。私がずっと探していた小説の下巻だ。読む前に、ひどい本だと釘を刺された』


「どうだった」


『その本は……下巻は素晴らしい本だったよ』




と私は云った。




ありとあらゆる知識を取り入れなければ私が逆に殺される、だから本を読んでいた私はこれまでに、それほど引き込まれる本を呼んだことはなかった。
あらゆる台詞が胸を摑んだ。
あらゆる人物が自分であると思えた。


その本をくれた人物は“ひどい出来だ”と評したが、感想は全く逆だった。
ほとんど食事もせず一気に読み終わった。
読み終わるとすぐに二回目を読み始めた。



脳細胞のひとつひとつが、その本を読む前と後では別物に生まれ変わったように感じられた。
その本を知る前と後では、世界がまったく違ったものになったように思えた。




それまでの私には殺ししかなかった。
任務の為に人を撃ち、命を奪う。
その本は私の目を開かせた。
暁に差す陽光がそうするように。




ただひとつ、その下巻には欠点があった。
最後に近い数ページが切り取られていたのだ。




おかげで重要なシーンを知ることができなかった。
登場人物の一人である殺し屋が、人殺しをやめた理由を語るシーンだった。


その殺し屋はなぜ殺しをやめたのか。
他のページには推察するに足る情報などなく、私は煩悶した。


それは物語上重要な転換点となるシーンであったし、そのシーンが殺し屋を理解するうえで重要なことは明らかだった。


すでに古本でも出回っておらず真相の確認は困難で、問い糾そうにも髭の男もその後二度と、私の前には現れなかった。






悩んだ末、前世での私が出した結論は、


──ならばお前が書け。


私が出した結論は“自分で書く”だった。

佰参拾玖→←佰参拾漆



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黒龍(プロフ) - ハリネズミの毛玉さん» 此処までこの作品に付き合って頂き本当にありがとうございました!皆様のお陰で完結する事が出来ました!ちまちまと番外編も書いていこうと思っていますので、良かったら暇潰し程度にまた読んで頂けると有難いです^^ (2020年3月27日 23時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - ちょこれーとさん» 此処までこの作品に付き合って頂き本当にありがとうございました!そう云って貰えると迚も嬉しい限りです!ちまちまと番外編も書いていこうと思っていますので、良かったら暇潰し程度にまた読んで頂けると有難いです^^ (2020年3月27日 23時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
ハリネズミの毛玉(プロフ) - 完結おめでとうございます!お疲れ様でした! (2020年3月27日 9時) (レス) id: 9b2a72a438 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこれーと(プロフ) - 完結お疲れ様でした。とても面白い作品でした! (2020年3月27日 9時) (レス) id: adc186f0a4 (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - マーシャさん» 嬉しいお言葉、有難う御座います!不定期にはなりますが更新頑張ります!! (2020年3月2日 1時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒龍 | 作成日時:2020年1月23日 2時

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