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佰伍拾参 ページ25

作之助はその小さく震える手を私の背中と後頭部にまわせば強く、強く抱き締めて肩口に顔を埋めた。



嗚呼、不思議なものだ。
怪我のせいで痛い筈なのに全く痛くない。
寧ろ冷えていく私の身体に彼の温もりが伝わって迚も心地が好い。
……それに何だか先刻まで感じていた恐怖すら何処かへ行ってしまったような、そんな気すら起こす程の優しい温もりだった。




「今度こそ俺はやり遂げよう。お前が繋いでくれた未来を最後まで貫くと約束する。Aの意志も必ず引き継ぐ」


『ふふっ、ありがとう』




お前は自分が優しい人間であったと云う事に気がついていなかったのかも知れない。
優しい人間ほど自分の優しさには気がつかないものだとよく云われるが、本当にその通りだ。


お前の優しさに私は幾度も助けられた。
お前が居なければ若しかすると私はとっくの昔に死んでいたかも知れない。


前世で叶える事が出来なかった私の夢。
今世で叶える事が出来る可能性が開いたお前の夢。
その夢が叶う事を私は、ずっと……ずっと願っているよ。




──……却説、これで最後か。






作之助の背をトントンと叩けば、彼は名残惜しそうに私から身体を離した。
そんな彼に目を細めて微笑みかけてから、私は一番自身の思いを伝えなければならない人物の方へと、ふらつき乍らもゆっくりと歩み寄り、膝を落として左手を頬に添えた。




『太宰』




名前を呼べば太宰は眉を八の字にして、ぐっと口を一文字に結んだ。




『お前にも……否、最初からお前に云っておきたかった事がある……聞いて、欲しい』


「嫌だ、止めてくれ。助かるから、絶対に助かる筈だから。それ以上何も」


『聞……け……』




私は血に濡れた右手で太宰の手を優しく包み込むように握り締めた。

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黒龍(プロフ) - ハリネズミの毛玉さん» 此処までこの作品に付き合って頂き本当にありがとうございました!皆様のお陰で完結する事が出来ました!ちまちまと番外編も書いていこうと思っていますので、良かったら暇潰し程度にまた読んで頂けると有難いです^^ (2020年3月27日 23時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - ちょこれーとさん» 此処までこの作品に付き合って頂き本当にありがとうございました!そう云って貰えると迚も嬉しい限りです!ちまちまと番外編も書いていこうと思っていますので、良かったら暇潰し程度にまた読んで頂けると有難いです^^ (2020年3月27日 23時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)
ハリネズミの毛玉(プロフ) - 完結おめでとうございます!お疲れ様でした! (2020年3月27日 9時) (レス) id: 9b2a72a438 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこれーと(プロフ) - 完結お疲れ様でした。とても面白い作品でした! (2020年3月27日 9時) (レス) id: adc186f0a4 (このIDを非表示/違反報告)
黒龍(プロフ) - マーシャさん» 嬉しいお言葉、有難う御座います!不定期にはなりますが更新頑張ります!! (2020年3月2日 1時) (レス) id: 9b97ad947e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黒龍 | 作成日時:2020年1月23日 2時

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