10人目の居場所は、ここに。ー４ー (ページ45)

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Raul side

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画面の向こうで、"彼" は確かに生きていた。

そして、"彼" は終わりの時を迎えた。

下らないメールを送り続けたことをとにかく後悔した。

ドラマが始まって1分で、遠くを見つめるAくんの目に惹き付けられてスマホどころじゃなくなったけど。

心の準備ができていない、っていうのが最初の感想だった。

うたくんと出会ってからの日数は僕が一番短い。

だからこそ、うたくんの努力も苦労も知らないことの方が多い。

でも、うたくんが苦しい時に頼ってくれる存在でありたい。

そんな不謹慎な目標が叶った時があった。

「うたくん！！！？」

めめの撮影の現場に突然現れたり、ふっかさんのバラエティーの現場に出演しないのにやって来たり、最近そういうことが多いっていう話は聞いていた。

ドラマで限界なんだろなって思ってたけど、まさか自分の所まで来るとは、夢にも思わなかった。

電車を何本も乗り継がないと来られないような場所なのに、うたくんは身一つで突然現れた。

ちょうど雑誌の撮影が終わった時で、絶好のロケーションをスマホに収めているところだった。

後ろがざわざわしてるなーって特に気にしてなかったけど、さて帰ろうとマネージャーさんの車に戻ればラフな格好のうたくんが待っていた。

「え、えぇ？どうしたのこんな遠くまで？撮影？」

『ラウに会いたくなっただけ』

「そう、なの？取り敢えず外寒いから車入って、一緒に送ってもらおうよ」

『一個お願いなんだけどさ』

「うん、聞くよ」

『今日、ウチに泊まってくれたりしないかな』

察してくれたマネージャーさんが静かに運転する車内で、うたくんはドラマのワンシーンみたいに目を真っ赤にさせて泣いた。

「行くよ、絶対行く。だからそんなに泣かないで」

『………今日ね、おじいちゃんとおばあちゃんの命日なの。毎年、この時期になるとほんとダメで、一昨日から葵もいないし、家に一人だと、無性に不安で、』

「うん、大丈夫、今日も明日も明後日も僕が一緒にいるよ」

加入してすぐの頃は、自分には何もできないって思ってた。

ふっかさんとか佐久間くんとの数年間を埋めるのは不可能だろうって。

でも違ったね。僕の思い違いだった。

うたくんを守れるのは、きっと "僕ら" だけだ。