10人目の居場所は、ここに。ー４ー (ページ34)

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「ねぇ！！！そこの人！！！今にもフェンスを突き破って飛び降りそうなキミだよ！！！」

『…………何の、用ですか』

「今すぐそこから降りなさい！！私は誰かが飛び降りる瞬間なんて見たくないよ！！」

『……じゃあ、見なけりゃいいじゃないですか』

「嫌だよ！あと数分はここにいる予定なんだから！」

『は、？』

「先週骨折したんだけどね、随分早く治ったっていうのに全然退院させてもらえないの。だからここが今の私の憩いの場所、であり看護師さんから逃げてるってわけ！」

『…知りませんよ』

「私だってキミが何に悩んでるのか知らないよ！とにかく、死ぬのは勝手にしてって感じだけどあと数分は待て！！！」

"大樹" は力なく笑うと、足をかけていたフェンスから降りて屋上のベンチに横たわった。

物凄いスピードで松葉杖を使いこなし彼の元にやって来た "梢" はいきなり松葉杖を投げ出すと彼の頬を引っ叩く。

『いっったい！！』

「ははーん！私の右フックはどう？結構痛い？やられたって言ってみてよ」

『正気？』

「そっちこそ、正気じゃないでしょ。ここは、キミの死に場じゃない」

『……じゃあどこだって言うんだ』

「さぁ？私、速水梢って言うの、噂好きの26歳。そっちは牧村先生でしょ？優しい小児科の先生って聞いたよ」

『優しい、ね』

「子供は嫌いなの？」

『なんで』

「だって、昨日廊下で見かけた時、病室の外で入るか入らないか逡巡してた」

『……整形外科の歩行訓練は小児科の病棟まで来ないはずだよ、って屋上まで来てる人に言ってもムダか。』

「そう、ムダだよ」

『嫌いじゃないし好きだよ、みんな純粋で可愛い』

「じゃあなんで？小児科医があんな仏頂面してたら私は嫌だよ」

『小さい時、両親のストレスの捌け口にされてて、要するに虐待とか、育児放棄ってやつだよね。恥ずかしいことに、今でもその疑いがある子供を見ると情けないほど体が震えるんだ』

「それ、情けないことじゃないよ。当たりまえの防衛本能じゃん。試合の前の武者震いと同じじゃないの？その子供のことを守んなきゃ！って思ってる証拠だよ」

『…………初めて言われた』

「そんな泣きそうな顔しないでって。応援してるよ、ずっと。キミはきっと勇敢なヒーローなんだね」

【撮影開始から9日目】