35．おやすみ ページ38
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少女の攻撃範囲は、とにかく広い。
刀を振れば地面はえぐれ、大抵のものは吹き飛ぶ。
「…っと。危ない危ない」
最大火力がわからない以上、
大げさなくらい広く立ち回った方がいい。
技は使わない。間違いなく巻き込み事故が起こる。
「とは言っても、地上だけじゃ限界あるからね」
一太刀かわすと同時、宙へ浮き上がってみる。
開いた距離。
……が、少女が他へ標的を移すことはなく。
「ははっ！ いいね」
いい具合に、こちらの思惑に乗ってくれている。
より近い場所にいたはずの悠仁たちに
目もくれなかったとなると、これは吉兆だ。
少女は、宙を見上げたまま
ほんの少しの間止まる。
手にした刀は光に包まれ、
即座に白銀の弓へと姿を変えた。
「へえ、武器は自由自在か。なかなか便利だね」
飛んできた数本の矢はすべて無下限でブロックする。
少女もすぐに、攻撃が当たっていないことを
理解したらしい。
低めの位置で滞空しているこちらへ向けて
再び刀を手に跳躍した。
「……マジ？」
これは。
うまく行きすぎて、逆に怖いくらいだ。
──地面から、Aから。少女が離れた。
その向こうでAの体を運ぼうとしている
生徒たちが見えて。
一瞬。まさに瞬速で彼らの元へ立ち戻る。
「よっし、ミッションコンプリートだね」
「いや、まだ何もしてませんけど」
「これでいいの……っと」
無造作に伏したままだったAの体を
横抱きにして抱える。
それからドゴッ、と鈍く床をえぐる音。
やはり少女はすぐに駆けつけてくる。
Aを取り返しに……いや、守るために。
でも、少し遅かった。
少女からAを奪う“敵”に向けられる刃は、
ピタリと無限の結界で止まった。
これこそが狙いだ。
場の要を握っていたのは、A。
「……そんなに、必死にならなくてもさ。
僕はこの子を傷つけたりしないよ」
腕の中に収まる冷たい体。
ずっと放ったらかしにされていたせいだろう。
目の前の少女と同じ新緑を想って
開かない瞳を、そっとなぞる。
だから、せめて。
「──大丈夫。もう敵はいないよ、A」
穏やかに。
無限のせいではない、
少女の動きが、押さえられたように止まる。
「……ゆっくり、おやすみ」
最後、その一言。
白の少女が、フッと瞼を下ろす。
やがて淡い光に包まれて、静かに、静かに。
光の粒となって消えていった。
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Sn(プロフ) - プスメラウィッチさん» コメントありがとうございます。五条悟オチです。長めのお話になる予定なので、頑張って完結させたいと思います。 (2021年8月26日 22時) (
レス) id: 812f073419 (このIDを非表示/違反報告)
プスメラウィッチ - 初めまして、この小説は五条悟オチですか？できれば五条悟オチでお願い出来ますか？続き頑張って下さい。応援してます。 (2021年8月25日 23時) (レス) id: 6c0ddf792c (このIDを非表示/違反報告)
Sn(プロフ) - Spicaさん» ありがとうございます。励みになります。 (2021年8月25日 14時) (レス) id: 812f073419 (このIDを非表示/違反報告)
Spica(プロフ) - とても面白いです！続き期待してます！ (2021年8月25日 14時) (レス) id: 68c958f74e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Sn | 作成日時：2021年7月24日 16時
